間章 頑張る話 8
「…いえ。…確か。…マーチス様が若かりし頃は、…あの様な様子は無いと記憶してます。」
「…はい?!…本当なの?」
「…あれは、まだ此処の屋敷に奉公させて頂いて、日が浅い頃でした。…先代の旦那様から聞かせて頂いた話があります。」
「お父様から?」
「…はい。…旦那様曰く、…マーチス様は、所謂は婿養子で、侯爵家に入ってから家督を継いだのです。…しかし、子供の頃は、此処から西の方角に嘗て存在した農村の出身で、近所の畑に入ってトマトを好んで食べていたと。」
「…え?…何よ、それ。」
「今と、だいぶ違いますね。…」
次第に周りの大人達は話を聞くと、次々と発言しだす。
「…それなら、いったい何時から、今の様な様子に?」
「…いや、そこまでは。…私も数十年と、この屋敷で執事を勤めてます。…ですが今回と同様に、マーチス様が滞在された際にも、全く変わらない様子でした。」
「…えぇ、…結局は振り出しではないですか。」
「…そうですわね。」
「…他に似た様な事で、何か思いだせないの?」
「…うぅむ。…年のせいか、なかなか思い出せず、…申し訳ないです。」
そのまま彼らだけで、話が進んでしまう。
そんな中で、サーラだけが取り残されており、
「ふみゃぁ~。」
と、一人で作業台に突っ伏しながら、思考を巡らせている。




