2話 5章 蜂蜜レモン水/手作り素麺(そうめん) 13
暫しの後に、アリサは泣き止むと、小さく寝息を立てている。
ようやくして、事態が落ち着いた頃合いに、
「…で、街で何があったんじゃ?」
と、村長が代表して問いかけだす。
すぐにサーラは、街での出来事を、要所を掻い摘まんで、丁寧に説明していた。
その話を、ロンドは聞くと、膝から床に崩れ落ちた。さらに陰鬱な雰囲気を漂わせながら、独り言を呟きだす。
「なんと言う事だ。…愛する娘が危険な目に合ったのに、さっきまで僕はベッドで寝てたか、アリサちゃんに、あたふたしてただけ。…僕は、なんて駄目な父親なんだ!!」
「「もとから、じゃ。」」
と、村長夫妻も声を揃えて、間髪入れずに指摘する。
彼等の視線も、やや冷ややかである。
そのまま、ばあ様だけは二階の階段のある方向へと、振り向きながら様子を伺う。
すぐにサーラは、問いかけた。
「…気になるの?…あのお爺さんの事?」
「…性分さね。…長い間、村で医者の様な事をしてたらな、私でも何かの役に立てるならと思うわい。…ただ本当の医者がおるなら、必要ないかもしれないが。」
と、ばあ様も前を向いたまま答えると、身体の向きを変えて、ゆっくりと歩きだした。
その後を、サーラも付いていく。
「はぁ、…全く仕方ないの。」と、村長もぼやいたら、ゆっくりと歩きだす。
やや遅れて、ロンドも気がつき、急いで後を追いかけたのだった。
※※※
そのまま彼等は階段を上がり、二階の廊下を突き進む。屋敷の使用人達が多い方へと向かって行けば、自ずと目的の部屋へと辿り着いた。
その部屋からは、扉越しから話し声がする。片方の声には聞き覚えがあるのだった。
サーラ達は立ち止まると、耳を攲てて、顔を扉へと近づけていた。




