2話 5章 蜂蜜レモン水/手作り素麺(そうめん) 10
それから程なくしての事だ。
サーラ達の側にも、屋敷の馬車が到着して、停車する。
すかさずジュスティーヌが動きだし、ワゴンの扉を開け放つと、声を掛けてくる。
「…さぁ、メローナ様、サーラ様、…我々も屋敷に戻りましょう。」
「…えぇ、わかりましたわ。」「ほにゃ?!」
と、真っ先にメローナは返事をすると、サーラの手を引きながら、ワゴンに乗り込んだ。
さらにトーニャも、後に続いて行く。
全員がワゴンに入ると同時に、ジュスティーヌが扉を閉めて、急いで御者台に乗って手綱を握って操る。
すると馬車は、ゆっくりと走り出した。
「あ、…待って!」
しかし、サーラは途中でワゴンの窓を開けて、大きな声で制止を促すと
「…アニタさん!…リリャーさん!」
と、再び外に向かって呼び掛ける
やや遅れて、馬車は停止した。
すぐにアニタとリリャーは、駆け寄って行くと、話しかけだした。
そのまま彼女達は、会話をしていく。
「どうしたんだい?…」
「…二人は乗らないの?」
「あぁ。…あたし達は、と言うよりも、この後の時間に、リリャーの診察が残っているんだよ。」
「そうなの。…さっきは、診療所に行く途中だったの。そしたらサーラちゃんを見かけたから、声をかけただけで、何もなければ、明日の昼過ぎに会いに行く予定なの。」
とリリャーが説明をすると、言葉を打ち切った。
「…そうなんだ。…なら、待ってるね。」
やがてサーラは頷き、納得して返事をする。
その後に、ジュスティーヌが頃合いを見計らうと再び手綱を動かし、馬車を走らせる。
段々と彼女達の姿は、後ろの方へと遠ざかってしまい、
「…だから、また明日ね。」
「…アリサちゃんと、待っててね。」
と、言う声が辛うじて聞き取れるのだった。
サーラは見えなくなるまで、窓から様子を眺めていた。




