2話 5章 蜂蜜レモン水/手作り素麺(そうめん) 1
空は日が傾きだしてきていた。やがて夕暮れを迎えようとしている頃合いだ。
【ネオマルフィア】の高級商店街は、大通りも活気づき、客や通行人が多く行き交う。
ただし、今は普段の様相とは異なり、別の騒がさに溢れていた。
ある店の前に、数人の人集りが出来ていた。誰も彼もが中心を遠巻きに眺めていた。
その視線の先では、マーチスがいた。うつ伏せに倒れた状態である。呼吸はあるようだ。身体が一定の間隔で、微かに上下している。ただ弱々しい感じだ。
彼の近くには、高級雑貨店の店長や、店員達がおり、側に寄り沿っているようだ。
「すみません、何方か!…この方を運ぶのを手助けしてくれませんか?」
と、店長が周囲に呼び掛けている。
しかし、周りの人々は戸惑いを露にする。
それでも、徐々に何人かが側に向かいだす。
やがて店長を合わせて数人となる。
彼等は、マーチスを取り囲む様に並びながらしゃがんだ。
「いきます。」
と、店主が合図をだした。
それと同時に、全員で一斉に力を入れて持ち上げる。
しかし、全くピクリとも持ち上がらないのだった。何度も同じ事を繰り返すも、状況は変わらないようだ。
次第に、彼等には疲労の様子が表れだした。
「こんなの、どうするんだよ。」
その様子に、人集りの誰かが人知れずに呟くのだった。
その時、遠くから大勢人の気配が近づいてくる。
次第に、この場の人々は気がつくと、次々と顔を向けて確認していく。




