間章 波乱の事件と再開 13
「ほい、これ食べる?」
その時、サーラが服のポケットから、小さな布袋を取り出した。さらにクッキーの目の前で見せびらかす様にして気を引く。
すぐにクッキーは反応し、興味を移した。
ほぼ同時にトーニャは逃げて、馬車の物陰に身を隠す。
それと入れ代わる形で、今度はメローナが側までやってきて、質問をしてくる。
「…これは、なんですの?」
「犬用のクッキー、…さっきの食材のあまりで作った。小麦粉と油と水しか入ってないから、食べても大丈夫。」
「…そ、そんな物まで作ってたのですの?…」
「うん。…ほい、」
とサーラは質問に答えたら、袋を差し出した。
すぐにメローナは受け取ると、中身を利き手の掌に出した。さらに犬の方に身体を向けて、しゃがみ込むや否や、掌の菓子を見せながら「食べてよし。」と、指示をする。
それを受けて、クッキーは菓子を貪りだす。瞬く間に間に食べきると、メローナの掌まで嘗めだす。
メローナも再び袋の中身の残りを取り出したら、再び差し出して与えていた。
やがて袋の中身は、空となる。
するとクッキーは、今度はサーラの方に向かうと、急に後ろ足だけで立って寄りかかるとサーラの顔を嘗めだした。
「…って、まだ食べ足りないの?…おねだりしてますわ。」
その様子に、メローナが解説している。
「ふふ、そうなの?」
とサーラはくすぐったそうにしながら、クッキーに問いかける。
彼女達の周囲には、和気藹々とした雰囲気が漂っていたのだった。




