2話 四章 手作りクッキー/すみれ茶 15
「…あの~、メローナ様。…発言しても、良いですか?」
ふとトーニャが唐突に喋りだし、恐る恐る利き手をあげている。
「なんですの?」
とメローナも、聞き返した。
「…あたしは、手作りのお菓子でもいいと思います。…このクッキーだって、贈り物にするのも悪くないかと。…」
と、トーニャは返答していた。
さらに、続けてブランモンも、付け加える様に言葉を投げ掛ける。
「…確かに。…聞けば、殆ど初対面の様ですし、…贈り物なら、行儀しい物よりも適しているかもしれませんね。」
だが次の瞬間には、メローナの鋭い視線が突き刺さる。
それ故に、トーニャとブランモンは、萎縮してしまう。
「…べ、別に、このお菓子や手作りの品が悪いとは言ってませんわ。……ただ、先程も申しました通りでしてよ。…たとえ私が作ったとしても、不出来な物なんて渡したって、もし気持ち悪がられでもしたら、……」
またメローナも、すぐさま取り繕う様に反論するも、
「前に一度、…家の者にも内緒で、一人でお菓子を作りましたわ。でも結局は美味しくなかったですし、また作ったって同じですわ。」
と、次第に発っした言葉が尻すぼみとなっており、最終的には自信なさげに顔を俯かせていた。
「なら、教えて貰って作ればよいじゃろう。…」
すると唐突に、サーラが何気なく呟く。
次の瞬間に、他の皆の視線が集中する。
ついでにサーラは、ブランモンの方を見て、目配せする。
それに彼も即座に察して、話を振りだす。
「…良い考えですね。…どうせなら、この場の皆で作りましょうよ。…まず、私が先程まで彼女がしていた手順で、再び手本を見せます。…メローナ様も真似して、再び挑戦されてみては?」
「貴方達まで、何を言ってますの?」
ほぼ同時に、メローナは顔を上げて驚き、声をあげた。
しかし、ブランモンは更に発言し、畳み掛けていく。
「…美味しい、美味しくないは、一先ず置いといて、やはり女性からの手作りの品は、どんな品でも相手は嬉しく感じますよ。」
「…馬っ鹿じゃ、ありませんの!!」
と、再びメローナは声を荒げて、悪態をつくも次第に首を傾げながら、考え込む仕草をしていると、
「…貴女も、手伝うんですわよ!」
と、サーラの方を向きながら、指差しして命令してきた。
対してサーラは、やや苦笑いしながら文句を垂れる。
「え~?…何で?」
「お黙り!…それよりもエプロン、持ってきなさい!」
対してメローナも大声で一喝すると、続け様に周囲へと指示を飛ばしていた。
すぐさまトーニャが反応すると、慌ててエプロンを取りに走っていった。
そうして、キッチン内では着々と準備が行われていった。
その様子に、サーラは口元に微笑みを浮かべつつ、肩を竦めながら「やれやれ。」と、小さく呟くのだった。




