間章 僅かな異変と暗躍 5
「おい、居るか?」
と、大柄な男が周囲に呼び掛ける。
すると大きな船の死角から、物音が聞こえると、誰かが近づく気配がした。
そちらに大柄な男が振り向くと、小柄な男が側まで寄ってきていた。此方も同じく周囲を見回しており、人気がないか警戒していた。
やがて男達は合流すると、互いに顔を見合せながら、囁く様に会話をしだす。
まず大柄な男が質問しだした。
「…話とは、…例の件か?」
「…あぁ、…昼間に領主の馬車がいたようだ。しかも、市場に小さな娘を連れて来ていたらしい。…間違いなく、また例の娘が来ているようだ。」
と、小柄の男も頷きながら答えていた。
「…あの、縦ロールの娘だろう。…なら話は早い。…我々の計画を実行に移そう。」
「あぁ、…いつにする?」
「その娘を見かけたらなら、すぐにだ。…幸いにも、今の俺達には暇な時間は、たっぷりとある。」
「…そうだな。…よし、ならば明日から、市場で張り込むぞ。…その後は、」
そのまま暫くの間、男達の話が続けている。凄く熱心に内容を詰めていき、意見を纏めていた。
「では、また。」「あぁ、…ぬかるなよ。」
それから男達は、各々が別々の方向に歩きだし、消える様に身をしながら闇の中に姿を隠してしまった。
やがて夜の港は、普段の様相と変わらず、さざ波の音だけが聞こえていた。
まるで最初から、誰もいなかったみたいである。




