2話 2章 特性サンドイッチ 9
「どうぞ、召し上がれ」
とサーラは言って促すと、大人達の前に料理を差し出す。
「…おや、わざわざ作ってくれたのかい。」
「そいつは、すまんなぁ。」
「せっかくだし、ご馳走になるとするかいね。」
「ワシは、こっちのハムやチーズのにしよう。」
「私は、こっちの酢漬けの魚が入っているのにするかしら。」
すぐに村長夫妻は食前の祈りを済ませると、好みの具のサンドイッチを手に取って、徐に口に運んで咀嚼しだした。噛んだ瞬間に、パンの触覚や具材の歯応えが口の中に広がり、やがて食材の味を感じだすと、思わず感想を喋りだす。
「ほう、…ハムとチーズは、至って普段の食べている味だな。だが肉は少し厚めに切ってあるから、食べ応えがあるわい。」
「…こっちも魚の酸味が強いね。でも野菜のおかげで、丁度いいよ。パンも少し固めでも、汁を吸って程よく柔らかくなっているねぇ。」
「…こりゃ、旨いや。」
と、ロンドも既に食事に手をつけていた。この中で、最も満面の笑みを浮かべており、次々に食べ進めていく。
「…ねぇ~。」
と、アリサも両手を前に伸ばし、値だってくる。サーラに、サンドイッチを小さく千切って貰うと、大きな口で頬張ったのだった。
そんな様子をジョンドは側で控えた状態のまま、ただ黙って見ている。
「ジョンドさんも、良かったらどうぞ。」
すると再びサーラが声をかけてきて、一つのサンドイッチを手にしたら、目の前に差し出してきた。
「あぁ、いえ。…私まで貰う訳には。」
対してジョンドは、片手を横に振りつつ、丁重に断わっていた。だが突如として、「ぐうっ。」と自身の腹の虫が鳴ってしまい、
「…わかりました。…では、一つだけ。」
と恥ずかしそうにしながらも受け取り、ゆっくりと口に運んだ。




