２話 序章 遥か昔の思い出 １
その少女、ーーサーラは夢の中で、昔の出来事に思いを馳せていた。
それは、まだ自分が今の名前や可愛い見た目の年端もいかない容姿ではない。
全くの別人かつ高齢の男性の姿だった時の事である。
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世界で最も広い大陸【ランドロス】。
その最南端に位置する辺境の港町【マルフィア】は、一風変わった領主の男が納めていた。
その男は、名前をラーサという。白髪の老人で、背が高くがっしりした体格をしており、料理が趣味という、変わり者として有名な人だ。
それが彼女の前世の姿である。
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暑い季節がやってきた。ーー。
雲一つない澄みきった空だ。強い日射しが辺りを照りつけており、空気が肌に纏わりつくように蒸し蒸ししている。じっとしているだけでも、汗が頬を伝う程だ。
此処は、【マルフィア】で、一番に大きな領主の屋敷である。
そこでは大勢の使用人達が、齷齪と家事を行っているものの、暑さに参ってしまい、思うように動けず体力を消耗していた。例年以上の気温の高さに、誰も彼もが普段の様な元気はないようである。
一方で、ー
その屋敷の裏庭には大きな畑があり、あらゆる種類の野菜が自家製で栽培されている。どれも良く熟していて、はち切れんばかりに丸々している。
そこでラーサは作業着姿でトマトを収穫しており、一つずつ吟味しては籠一杯にに入れると、すぐに踵を返して屋敷の裏口の扉を潜り抜けて、キッチンに赴く。
そのまま彼は、作業台の天板に籠からトマトを取り出し、さらに氷室からも大量の食材、ーー様々な野菜や果物、肉と魚、を取り出しては並べ終わると、さっそく一人で調理をしていく。
それらは手早く作業が進むと、差程の時間を掛けずに料理へと作り変えられた。かなりの品数がテーブルに所狭しと並んだのだった。
出来上がったのは、主に野菜多めにが使われたメニュー、ーーミネストローネや野菜のポトフスープに、揚げ小魚の酢漬け、茹でた薄切たり肉乗せのサラダなど、である。食欲を掻き立てる香りが、周囲に漂っている。
