7話 思い出のアップルパイ 20
やがて村人達も、話の大筋を理解し、話に加わる。
すぐにリリャーは、再び話しをしだした。
「今にして思えば。…私は遠くに逃げたかったんだと思います。…それから、一人で赤ちゃんを育てなきゃって考えて、住める場所や仕事を探していました。…でも、…」
「でも、何?」
「…ある日から、何を食べても美味しく感じなくなって、胃が食べ物を受け付けずに戻してしまうんです。…でも、食べないと赤ちゃんにミルクもあげられないから、なんとか食べられそうな物を先に探す事にしたんです。…それで、この村に来た時に手頃な小屋を見つけました。…少しの間だけ赤ちゃんに中で待ってて貰って、山の中に入って食料を見つけにいったんです。」
「成る程、そういう経緯だったか。」
「なら、この子を捨てた訳じゃなかったんだな。」
「で、その後に山を歩き回るうちに、獣に襲われていたと。」
と最後に親方が呟く。
「はい、…その通りです。…皆さんに、ご迷惑をお掛けしました。」
とリリャーも返事をしたら、話を締めくくり、再び俯いては黙りこくる。
しかし誰かが近くにやってくる気配がした。
ゆっくりとリリャーは、再び顔をあげる。
その視線の先には、アニタがいた。側まで来ていて、静かに立っている。
リリャーは、首を傾げながら問いかける。
「あの?…アニタ?」
するとアニタは、すかさず傍らで跪きながら真剣な表情で語りだした。




