7話 思い出のアップルパイ 19
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ようやくしてリリャーは我に返る。ふと気がつけば、両目から涙が頬を伝い、止めどなく溢れ出てきていた。もはや我慢の限界を迎えており、次第に嗚咽を漏らしながら、独り言の様に身の上話を話を喋りだした。
「私、…幼い頃から身寄りがなくて、ずっと自分の家族を持ちたいと夢見てました。…失敗や迷惑かけるのも多かったけど、必死に働きました。…職場の店主のマリーさんに支えて貰って、なんとか慎ましくも日々を過ごしていました。…そしたら、ある日、生まれて初めて男性の方を好きになったんです。」
「うん。うん。…そうなのかい。…」と、ばあ様が相槌を打っていた。
領主達は話に聞き入っていく。なんとも言えない表情だ。
「私達はすぐに付き合い、愛しあいました。…あの人は最初は凄く情熱的で優しい人だったのです。…でも私との間に子供が生れた途端に、別の女性と一緒に姿を消しました。…その事が私は信じられなくて不安になり、マリーお婆さんに助けを求めました。…そうしたら、同じ時期にお婆さんも急に亡くなってしまって。…もう私は何がなんだか分からなくて、…気がついた時には、赤子を連れて馬車の荷台に乗ってました。」
「それで、この辺りを転々としてたのか。…」
「しかし、なんだって、またそんな事を?」
「男連中は黙ってな。…子供生んだばかりで精神的に落ち着かないなか、そんな事になったらパニックにもなるさね。」




