7話 思い出のアップルパイ 4
しかし領主達は、苦い表情のままである。
次はサーディンが口を開き、喋りだす。
「赤ん坊か。…どうして、そこまで加担するのだ?」
「えっと、…?」
とサーラは呟き、戸惑いを露にする。
「…普通は、厄介事なんて嫌だろう。…ましてや、その赤ん坊は君達とは関係なかっただろう。…血の繋がりもないのに家族なんて、ハッキリと言えるんだ?」
「…?」
やがて周囲の村人達も、困惑している。
それでも、サーディンは喋るのを止めない。
「そんな事を言えば、…本当の血縁の私達は、何なんだ?……私達だって、どうにかしてやりたい。……でも今回の事を知って、未だに心の何処かでは、…鬱陶しいと思っているんだよ。…いったい、私達と君達と、何が違うんだ!?」
それは、まるで独白のようだった。
「サーディン兄さん。…」
とエピカも兄の名を呼び、悔しげな表情で俯く。
「…あぁ、成る程ね。」
「俺達も、前はそうだったな。」
「でも、さぁ。…」
「サーラが頑張っているのに、…知らん顔できないから。」
対して一部の村人達は、互いに囁く様に会話していた。領主達の様子に既視感を感じており、自然と納得していていた。
次第に辺りには、静けさが漂いだした。
「あの!!」
ふと唐突に、誰かが大きな声で呼び掛けてきた。
そちらへと全員が振り返る。
するとロンドが寄ってきた。他のハンター達を押し退けて、領主達の目の前に辿り着くと、
「領主様達、…どうか、娘の気が済む様にやらせてください!!」
と言いながら、両膝を地面に付き、頭を下げて懇願した。綺麗に踞き、額を土や砂利に擦り付ける。
周りの村人達はギョッし、表情が固まった。
「お父ちゃん!?!」とサーラも、大きな声で呼び掛けた。
領主達も慌てふためいてしまう。




