そんな悪夢が実際起きても僕は君の味方だと。父は言っていた。だから
キャラの名前を途中で間違えていたので一部書き直しました。なんでこんなミスしたんだろう………(-_-;)
「メリージュン。君との婚約を破棄する!!」
第二王子の声が講堂に響く。
「君は私の婚約者である事を理由にして弱き者を虐げて、このメリッサに数々の暴力をふるったそうだな!!」
「殿下。わたくし怖くて……」
第二王子の傍で震えながら涙を流す少女。彼女は確か、男爵家の庶子として学園に転入してきた少女だったなとソレイユは呆れながら見つめる。
そんなソレイユの視線の先には断罪されている侯爵令嬢の姿。彼女が毅然と立っているのはいつか来る事だと覚悟していたからだろう。
「愚かな嫉妬で幼気なメリッサを虐げるなど許せる事ではない!! 権力をかさに着て無理やり私と婚約を結んだ」
「――お言葉ですが、殿下」
言葉を遮って、メリージュンを庇うように前に立つ。
「メリージュンは、もともとこの私、ソレイユ・ヒューリーとの婚約が決まっていたのを、王家が王命と言う権力を振りかざして横やりを入れて貴方の婚約者になりました。そう、貴方に嫉妬する理由などありませんし、権力をかさに着て無理やり婚約を結んだのは王家です!!」
講堂に響く声で真実を告げる。
「駄目……ソレイユ」
かたがたがた
先ほどまで毅然としていたメリージュンの怯える表情を安心させるように微笑む。
「大丈夫だよ。メリー」
俺は君の味方でいる。
「もちろん。その時の契約書も残されていますよ。今、お見せしましょうか?」
だって、俺も俺の父も君の……君の家族の味方になると約束したのだから。
「リック。メリージュンと君の子供のソレイユを婚約させたいのだが」
ロアンナ侯爵は父の親友で、母親同士も仲が良かったので必然的に俺とメリージュンも幼馴染として常に遊んでいた。
「何言いだすんだ。急に」
君でも冗談を言うんだなと父が笑うが、侯爵の表情は硬かった。
「レット。何があった?」
笑いを引っ込めて父が尋ねると。
「夢を見たんだ………酷い悪夢だ」
夢の中ではメリージュンは第二王子の婚約者になっており。王子妃教育として毎日毎日王城で通い勉強する日々。王子の仕事の手伝いもこなしていたが、王子が仕事をすべて丸投げして、男爵家の庶子と恋人になるというもの。
そして、嫉妬に駆られて暴力をふるったとメリージュンは罰せられて、北の塔で幽閉。王子のするべき仕事をすべて押し付けられて獄中死するという酷い内容だったのだ。
「私はメリージュンが可愛い。あんな悪夢は実際夢だと言われても許せない!! ならば、せめて夢の内容が少しでもずれてくれればいいと思って………それに、親の欲目だが、メリージュンの結婚相手にソレイユは似合うと思うんだ」
その言葉が嬉しかった。
「ソレイユ♪」
摘んできた花を嬉しそうに見せてくれるメリージュンの笑み。その笑みをいつまでも見れるならきっと幸せだろうと幼心で思ったのだ。
「メリージュン。メリージュンはソレイユをお婿さんにしたいか?」
侯爵の言葉にメリージュンは考え込むようにこちらを見て。
「うん♪ メリーはソレイユのお嫁さんになる♪」
と満面の笑みを浮かべていた。
それが嬉しかった。
だって、メリーは俺の初恋なのだから。
だけど。
「どうして……これではあの悪夢と同じではないかっ!!」
血を吐くような侯爵の声。どういういきさつか不明だが、メリージュンとの婚約の届けを出そうとした矢先に王によってメリージュンと第二王子との婚約を命じられた。
断る事は出来なかった。すでに婚約を結んでいると訴えても届けが受理されていないから無効だと言われた。
あの時の侯爵の嘆く声を忘れられない。
だから。
「レット………」
父が告げた言葉は俺の指針であり、誓い。
「そんな悪夢が実際起きても僕は君の味方だ。絶対に」
「絶対。君と君の家族を助けてみせるよ」
宣言と共に見せつける証拠の数々。
婚約の際に結ばれた契約書。
悪夢通りなら一方的に婚約を破棄されて、冤罪を言われる。ならば、婚約の際の書類をしっかり残して、王命であるという調印も押してもらう。
次にその男爵の庶子が王子と恋人になるというのならその関係は契約違反であると言う事でしっかり証拠として残させてもらおうと魔法技師に資金を渡して、魔道具の作成をしてもらった。
そう、侯爵が悪夢の説明をする際に言っていた。
「目撃者の証言だけで、王子の派閥の言葉だ。それが偽りである可能性が高い状況だった。こんな時盗聴器とか監視カメラがあればいくらでも冤罪だと分かったのに」
という言葉を元にそれがどういう道具か詳しく教えてもらい作ってもらった魔道具を皆に見せるように高く上げて起動させる。
『アレハンドロさまとの好感度を上げるのに悪役令嬢が仕事しないじゃないの!! 仕方ないわねっ!!』
男爵令嬢が大きく天井に映し出されると、持っていた教科書をびりびりに破く。
破いた教科書を机の上に置くと同時に目から涙を流し始める。
『メリッサ!! どうしたっ⁉』
『アレハンドロさまぁぁぁ!!』
しくしくとアレハンドロの胸にもたれかかって、
『教室に忘れ物をしたので戻ってきたら……教科書が…私の教科書が……』
と縋り付くように泣き出す。
「と、これで教科書を破かれる事件の真実が明らかになりました」
では次に。
と今度は生徒会での様子だ。
『殿下。この予算の事ですが……』
メリージュンの言葉と共に王子に差し出される書類。
『ああ。いいよ。乗馬クラブの予算なんて馬遊びにすぎないんだし、削減しても』
『何をおっしゃるのですか。乗馬クラブは軍馬を生産している辺境伯の元で育てられた馬を実際に見て、その技術を磨く一種の教養です!!』
『何言っているんだ。そんなの馬が買えない貧乏貴族しか入らないだろう!!』
そんな無駄なのいらないと切り捨てて出ていく第二王子。
「そんな……メリージュン嬢が生徒会の資金を着服して予算が減らされたとさっき言っていたよな……」
乗馬クラブのメンバーの呟く声が聞こえる。
「嘘だっ!! こんな映像。何かの細工がしてあるはずだっ!!」
「そうよ!! きっと合成がしてあるはずよっ!!」
と喚く二人に、
「では、これは」
と、数百枚もの紙を会場にばらまく。
それは婚約者に使われるはずの予算がすべて、男爵令嬢に使用されている事が書かれている書類。
男爵令嬢が今身に着けているドレス、靴。宝石すべての領収書。
「ああ。いくら破いても大丈夫ですよ。これは複製ですから」
侯爵の悪夢の内容を話す時に言われたのは、その手の書類をコピーできれば証拠として表に出せたのにと言う嘆き。
だから、それも手に入れて複製してみた。
「ああ。これで男爵令嬢をメリージュンが迫害したという証拠も生徒会の資金を着服したという話も王子の不穏な金の動きも分かりましたね」
そこまで告げるとすすっとメリージュンが前に出て。
「殿下。婚約破棄の件承知しました。ですが、これは、殿下の方に非がある事が証明されました。後で破棄の際の条件を照らし合わせてご報告させていただきます」
しっかりと頭を下げて告げるメリージュンに手を伸ばす第二王子に一瞥をして間に入って視線に入れないようにする。
二人でそっと講堂を後にする。
「これでレット小父さんの悪夢は終わるよな」
「助けてくれてありがとう。ソレイユ」
でもよかったの?
不安げに尋ねる彼女に向かって。
「婚約者を助けるのは当然だろう」
とあの時横やりが入らなかったらそんな関係だったのだからと告げ、
「それに父上とも誓ったんだ」
絶対に味方でいると。
「と言う事で、メリー。俺の国に亡命してくれませんか」
もうみんな君の返事を待っていたんだからと、とある国の第三王子は笑って告げたのだった。
侯爵は実は夢という形で前世の記憶を思い出していた。
国際結婚だったから余計王家の横やりが入った。