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ガラスの狐  作者: 練乳バナナ
4/4

夜はお好きですか?

どれくらい寝ただろうか 枕元の時計の針は4時を指している


早く寝すぎたせいか目が冴えてしまって眠れないので仕方なく起き上がると霞が机に突っ伏して寝ていた

そんな霞に毛布をかけて部屋を出る


昨日数年ぶりに再開した友達に案内してもらった施設を順に巡る


薄暗い廊下は歩くのには十分な電気がついているため道には迷わないが昼間とは違う静寂がそよ風のように心地よい


廊下の先に1点の光を見つけて歩く 一瞬昼間の 幻のような ガラスのような少女を思い浮かべる


昼間はガラスの向こうにあった病院にはカーテンがかかっている


そこから漏れ出す月光が廊下に溜まり温かさを感じる


外に出ると冬の冷たい空気が俺の頬を撫でる


「ねぇ」

どこからかよく通る鈴のような声が俺の事を呼びとめる


「君はさ 夜って好き?」

歩いてくる音に向けて首を向けると昼間の少女がいた


「こんばんは」

少し上擦った声で返す俺の慌てようを見て柔らかな表情で笑う


俺がベンチに座ると

「隣いい?」

と聞いて 俺の返事を待たずに隣に座ってきた


「私は夜好きだな」


「なんで? 寒いのに」


「寒いからいいんじゃん」


何を言いたいのかがよくわからないと言った顔で彼女の顔を見つめると彼女はまた笑うのでつられて少し笑ってしまった


「それと さっき病院にいたのにこんな寒いとこいて大丈夫なの?」


そう聞くと彼女は少し寂しそうな顔をして答える


「最近は問題ないよ 辛い治療は終わったし」


そう言って彼女はまた笑顔を作る


「君 名前は? ずっと君きみって呼ぶのは嫌だな」


「俺は白夜はくや」


「うわっ! そういう時は君は?って聞くのが普通じゃないの~?」


おちょくるようにそういう彼女に取ってつけたように聞く


「君は?」

そう聞くと自分が言えって言ったくせにと言いたくなるほど笑うがその笑顔を見てると言う気も失せてしまうほど無邪気な笑顔だった


「私はとうかだよ 冬の花ってかいて冬花とうか」


「不思議な読み方だね」


「君もね」


そう言って今度は二人共顔を合わせて笑う

二人を夜の北風が撫でる

「そろそろ戻るね また」


「うん また今度ね」

そう言って彼女に手をふるとこっちを見て手で狐を作り狐が鳴く


「ばいばい!」

そう言って彼女の影は建物の中に溶けていくように見えなくなる


ふと顔をあげると時計は30分も進んでいた

さっきより暗く感じる広間を駆け抜け施設に入る


部屋に戻ると相変わらず部屋は静まり返っていて 霞は机の上で寝ていた

自分もベットに潜って布団を深くまでかぶるがどうにも寝付けない


どれくらいか経って時計を確認するが4時35分を指している

時間の進みが遅い・・・


もそもそと起き上がって外で体が冷えたので風呂へと向かう 確か大浴場はいつでも使えたはずだ


そう思って風呂へ向かうと先客がいたらしい 風呂から水の音がする


誰だろうと思いつつさっきの少女を一瞬思い浮かべてしまうがここは男風呂なのでありえない


扉を開けるとがたいのいい男の人がいる マスターだろうか


「よぉ少年 寝れなかったか?」


「はい」


「おっと 見ねえ顔だな 今朝入ってきたって子か?」


「そうです 白夜といいます」


「おいおい そんな固くなるなって かたっ苦しいのは嫌いだ」


肉付きがよく本の中の戦士というイメージに似た男の人は熊のような見た目にも関わらず親しみやすい空気を放っている

人は見た目によらないというのはこのことだ


「この暮らしはなかなか慣れねぇだろ だんだん慣れていけばいい」

そう言いながら大きく息を吐き肩まで湯に沈む

巨体が沈むにつれお湯が漏れていく

「それにしてもここの風呂はいいだろ かけ流しの温泉だから施設も水道代気にしなくていいし常に新しい湯が流れ放題だ」

流れるお湯を物珍しそうに見つめる俺に男の人はつぶやくように言う


「まっ! なんかあったらまたこの時間に来いや! 浸かりながらでよけりゃ何でも聞くわ!」

そう言って立ち上がり風呂を出ていった


お風呂は貸切状態になり男の人がいた余韻に水の音が重なる

冬花・・・ さっきの少女の名前をポツリと呟いてみても反応はなく声は虚空に吸い込まれていく


明るい雰囲気の背景に 何か なにか潜んでいる 悲しいような 寂しいような 切ないような雰囲気


今となってはそれが何なのか なぜなのかも分からない

ただただぽかんと空いた穴のような孤独感に似た何かを感じる

ここまでで大体第1部みたいな感じです 2部はそこまで完成したら出します

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