狐の女の子
施設の人は基本的に管理者という意味でマスターと呼ぶそうだ 女の管理者はシスターだそうだ
その他にも
「白夜! ここが食堂だ!」
そう言って案内された場所は今は10時だというのにもういい匂いのする部屋だった
そこから迷った時用に地図の位置 カウンター 階段 エレベーター 男子棟 図書館 立入禁止の場所なの様々な場所を渡り歩く
「病院ここな!」
明らかに足りていない説明に虎斗が付け足す
「具合が悪い時はここで言えば見てくれるよ!」
そこを少し進むとガラス張りの部屋
透明感の溢れる空間日光が差し込み
別の世界に来てしまったかのような錯覚をした
その空間の真中に一人銀髪の少女がいた
子供がよくやる手遊びの狐を日光にかざし鼻歌を歌う銀髪の少女に俺はしばらく目を奪われた
不意にその少女が鼻歌を止めあたりは静寂に包まれる
そしてなめらかな長い銀髪を軽く振りながらこちらを向く
よく整った顔立ちでガラスの向こうにいる少女はこちらを向きスクリと微笑んだ
そのまま手遊びの狐をこちらに向け中指と薬指を動かして狐が鳴く
そしてまた笑う
何秒間見とれていただろうか 不意に風吹がなにかあるのか? と聞いて我に返る
よく見るとここは病院だった 所々に点滴を打っている人や機械をつけている人 ベットの上で話す人たちが一気に視界に飛び込んでくる
「何でも無い」
「腹減ったから飯食いに行こうぜ」
風吹の案に2人が同調してこちらを見てくるので俺も
「行こう」
と言って もと来た道を戻る
ここの昼食はその日のいくつかのメニューから選べるらしい
「美味かった~ お前のそれもらっていい?」
一瞬でぺろりと牛丼を平らげた風吹が俺の昼食をくれと言い出すので
いいよと差し出そうとする俺を霞が止める
「やめとけ それで一回でもあげるとこいつは一生つきまとうぞ」
そう言って俺は差し出した手を引っ込めるが遅かった
「いただきっ!」
「あっ!」
「てめぇ! やったな!」
「取られる方が悪いもんね」
やめなよ3人共~ そう言って止める虎斗を横目に霞が引っ込む
風吹が勝ち誇った顔で俺から奪ったものを貪る
「あと案内してないとこあったっけ?」
「いや ないと思うよ」
そう答える虎斗に風吹が同調して首を縦に振るが口の中身物が詰まっているので声が出ない
「じゃあ午後は久しぶりにゲームでもしようぜ 確か向こうの部屋4人の対戦型ゲームがあった気がする」
霞の提案にまたも無言で風吹が首を縦に振り回す
「あいつ あんなに馬鹿だっけ?」
そんな風吹を横に虎斗に尋ねる俺を風吹がじろりと睨む
「もともとあんな感じだったよね?」
そんな風吹を無視して虎斗が霞に聞くと霞がそうだよ?と同調するので風吹がちょっとかわいそうに思えてきた