逃亡劇
ネオンで満ちた街の中で、2人の少年少女が群衆の中を走っていた
身寄りのない子供など、ごくありふれたものだったが、彼らには何かが満たされていた
それはこの街にはあまりにも異質で、この街に満たされていた何か
彼らの後ろには、一つの大きな目が描かれたバイザーで顔を隠したパトロール隊が止まるよう叫びながら走っているのが見える
その手に握られているのは、鎮圧用のゴム弾ではなく、実弾が装填されている対「人」のアサルトライフルだった
2人は人通りの少ない裏路地に差し掛かった
それと同時に後ろから銃撃音が2、3発。
少女の肩に1発が着弾してしまった。よろめいた少女を、少年がなんとか受け止めてまた走るよう促す。
「馬鹿!殺すな!足を狙え!」
若い男の声がした。そう言われた他のパトロールは、狙いを少し下に付け、また発砲した
「『27』!マンホール!」
そう少年が叫ぶと、銃創を負っているにもかかわらず、少女はすぐそばのマンホールをその手で取り外し、そのままの勢いでマンホールをパトロールに投げつけた
銃撃を跳ね返し、向かってくるマンホールにパトロールが狼狽えた隙に、2人は素早く地下に潜り込んだ
「本部、地下に逃げ込まれた。至急応援を。座標は…」
先程の若い男が報告すると、他の者達から話しかけられる
「なぜ追わないんですか?」 「そもそもあいつらは一体…撃たれたのにマンホールを投げつけるなんて…」
舌打ちをしながら、イラついた様子で答える
「俺たちの仕事は質問する事じゃない、『地上』の警備だ。分かったら早くパトロールを再開するぞ。」
「…安全?『31』」
少年は少し周りを見てから頷いた
「…うん、今のところは、だけど…『27』、早く行かないと」
2人は暗い下水道を、目的地に向かって進んでいた
「……何故人間がここに?」
「知るか。来たんなら食っちまうのが一番だろ?」
「きひひ、そうだよね!そうだよね!食っちまおう!」
下水道の監視カメラが、妖しく光った。