最近、パーティ内で追放されるんじゃないかと議論されている魔術師が実はチート能力を持っている事を俺はひっそりと知っている
「なあ、そろそろあいつ要らねえんじゃねえのか?」
俺の隣にいる勇者が、遠くで街の人と話しているいる白い帽子と白衣のような衣装を纏った魔法使いの男を見てそうつぶやいた。白い帽子の魔法使いには距離的にこの会話は聞こえないだろう。
それを聞いて筋肉モリモリの斧を携えた大男と緑の帽子の魔法使いの女は、それに同意する
「あいつ使えねえしな」
「そうね。役立たずは要らないわよね」
「そうかなあ?」
俺はその発言にそうくいかかった。もちろん追放されそうな白い帽子の魔法使いのヤツに同情してるわけではない事実、その白い帽子の魔法使いは追放されてもいいほど弱い。使える魔法も初級のものばかりで今の戦闘では全くと言っていいほど役に立たないからだ。というか、そもそももう1人女の魔法使いがいるんだしパーティ的にもバランスが悪い。
「何だ?お前あいつを庇うのか??」
「いや...それは...」
「あんな雑魚なんでパーティに置いとくのよ!初級魔法しか使えないくせに!」
「ああ、本当になんでいるのかわからないレベルでな」
「そこまで言う事...!」
「何だ?お前はあいつのいい所があるって言うのか?」
「それは...」
言葉に詰まる。おそらくアレを言うのはまずいだろうし、何も言えなかった。もちろん使えないならすぐに追放してやるが、そうはいかないのだ。あの秘密を知ってしまったからには...
これを言ったら何かされるかもしれない。見た目は温厚そうだが、そういう奴ほど何をしでかすか分からないものだ。
それは少し前、俺は何気なくあの白い魔法使いと猿に魔物の戦闘を見てしなった。もちろんその猿の魔物は、このへんに出る魔物の中でも強い部類で、初級程度魔法なんかでは歯が立たないぐらいだ。俺が加勢しようとした時、その白い魔法使いは大きな火の玉を出したのだった。
「クロスファイア!!」
「うぐおおいいあああああああ」
「これでよし!」
猿の魔物は一瞬にして灰になった。嘘だろ?今の魔法、クロスファイアは上級者でもできない高度な魔法だ。それなのになんであいつがそれを?と言うかなぜそれを見せずにこのパーティにいるのか???あれを使えば追放とか言うレベルではなくあいつをリーダーにするレベルだ。ちなみに、うちの女魔法使いでも中級ほどの魔法しか使えない。
と言うことがあり追放を否定していると言うわけだ。だがこいつらはもちろんそんな事を知らない。俺だって偶然あの光景を見ていなければ同じ事を考えていただろう。
「ないんだろ?」
「それは...」
「おう、何の話だ??」
白い魔法使いが戻ってきて勇者は「何でもねえよ」と少し不満そうに漏らす。とりあえずこの話が中断されてよかった。もしかしたら追放したら、逆恨みで俺たちを亡き者にしてくる可能精を考えた。おお、恐ろしい...。
とりあえず、後でそれっぽく聞いてみるとするか...。俺はそう思いながら立ち上がった。
「なあ、ちょっといいか?」
その夜、みんなが寝静まった頃、俺は白衣の魔法使いを呼び出した。もちろん、強いことを隠している件を聞くためだ。と言っても直接聞くわけでは無い。もちろんそんなことしたらなにをされるかはわからない。俺がかかって勝てる相手では無いのはわかっているので、それっぽく聞いてみる作戦だ。
「なあ、なんか隠してないか?」
「え?え?え??いや、別に...」
動揺している。明らかにその件を探られたくないという感じだ。さて、ここからどうやってそれっぽく聞き出そうか。「お前強いだろ」とか「弱いふりしてるだろ」だなんてNGに決まっている。
「なあ、仲間だろ?」
「いや、いい」
「何でだ?そんなに言えない事なのか?」
それを言わない事に拘る意味ってなんだろうか。そう思いながらそう問いただすが口を開こうとはしない。
「お前はいいやつだ。仲間を裏切ったりしないのはわかってる!」
「ああ...俺の秘密は知られたく無いんだ」
もうらちがあかない...はっきりと言うしかないようだな。
「俺は...実は知ってたんだぜ」
「え?」
「ああ、もちろん誰にも言ってない。ちょっと目撃しちまってさ!」
「お前...」
「なんか言えないお前が苦しそうで...まあ知っちゃったもんはしょうがないよな!これからも仲良く行こうぜ!」
そう言いながら俺は手を出す。言ってしまったがこれで握手をしてめでたしめでたしと言うわけだ。いやー良かった。これでわだかまりもなくなるし、いい感じに終わる事ができた!言うもんだなあ!!あそこまで警戒していた俺が馬鹿みたいだ。
「...ああ。俺がお前のことを好きだなんてな」
「は?????????」
「俺とお前は男同士。本来ならしてはいけない恋なのだがどうしてもお前が好きだ!」
「ちょっと待て!何言ってんだ?」
「俺のことを好きになれないのか?ならこうだ!」
魔術師が魔術を使うと俺は視界が真っ暗になった。
☆
「あれ、夢か?」
俺が目を醒ますとテントにいた。外は明るく朝になっているようだ。良かった...悪夢だったのか。これで一安心...あれ?
俺は手と足が動かないことに気づいた。よくみると後ろ手にロープで縛られているではないか。
「目が覚めたか」
「お前!何を!」
「もちろん、俺とお前で愛の巣をつくるんだよ」
「やめろ!」
もがこうとするが手と足をロープで縛られている俺になす術はなかった。だんだん白衣の魔術師が近づいてくる。
「さあ、愛を育もうじゃないか」
「いや...やめろ...くるな...」
テントに俺の断末魔が響いた。