この世界でただ1人レベルが上がらない僕は、勇者パーティを追放されたい
初投稿です。お目汚し失礼します。
「うちのパーティに1人、お荷物がいる!」
勇者のクラスを持つ少年を中心とした「勇者パーティ」と呼ばれる面々が依頼達成の記念で宴会をしているところに、そんな声が響き渡る。
勇者はいぶかしげな表情で、唐突に叫んだ相手、勇者と同い年くらいの少年を見ながら答える。
「お荷物とは穏当じゃないな。一体誰の事だ?」
「それは……僕だ!魔素無しでレベルが上がらない僕はお荷物だ!だから、僕は勇者パーティを追放される!」
「はっ、何言ってんだか。そんなくだらない冗談言ってないでさぁ飲め、酒が足りてないんじゃないか?」
筋骨隆々のパーティの壁役、戦士が鼻で笑い、酒を勧めるが……
「冗談なんかじゃない。僕は世界で唯一の魔素無しだぞ!
皆と違って、いくらモンスターを倒してもレベルは上がらない。
新しいスキルが使えるようにもならないし、魔法も覚えず使えない。
身体能力だってレベルで上がらないし、頑丈になっていく事もない。
そんな僕が皆についていくのは無理なんだ!だから、今ここで僕は追放されるべきだ!」
「いやあのな、おまえレベルが上がらないって事はつまりレベル1相当だろ?
そんなので戦士の俺と互角に剣を打ち合う事が出来るとか、どんだけだよ?
今日も前衛に立って2匹バトルオーガを食い止めて、一匹は単独でぶった切ってたよな」
「必死なんだよ!
力も頑丈さも大して上がっていかないから、死なないために必死で技術を磨いてるんだよ!
前出なきゃ後衛が危ないから必死で前に出てるけど、ホントにキツいんだよ!
このレベルならトレーニングで到達できるの!もうこれ以上ヤバイ相手はキツいんだって!
頑丈さに変わりは無いから、一発あたれば僕終わるんだよ!?」
「つまりいっつも一発も食らってないんだよな、おまえ。意味分からんわ-。わっはっは」
「そりゃ死ぬからね!なんか食らえば僕死ぬからね!一発で!」
「たまに盗賊の私より早く敵に気づくくせに、何を言うの。
しかもステルススキル持っている敵の接近は、あなたしか感知できないじゃない」
「スキルも無いし魔法も使えないから、常にスゲー緊張して周りの気配探ってるの!
ステルススキルだって魔素の探知から身を隠すだけで、呼吸音や行動の気配まで消せないんだから。
慣れと訓練で誰でも行けるってば」
「うーん、スキル無しで探知しろって言われても、もうその感覚が分からないの」
「あ、私も魔法使わずに探知しろって言われても、どうすれば良いかさっぱりわからないわ」
「いや、魔法使いは専門家じゃないから仕方ないけど、盗賊は訓練次第だってば」
「無理」
「……」
「あなたの薬草の知識がどれだけ皆を救っているか、自覚されていないのですね」
「いや、僕の薬草の知識なんてパーティにしてみたらおまけみたいな物でしょ。
聖女の回復魔法には全然効果が及ばないんだから」
「その知識のおかげで、ギリギリの魔力の節約が出来て、かろうじて魔境から抜け出せたこともありましたね」
「アレは……僕がいなくてもきっと何とか「なっていません」……」
「そもそも本職の私よりも豊富な魔法知識を持っているとか、あなたどうなっているのよ」
「いつか何か使えるようになると良いな、と思って、魔法は片っ端から概略を勉強してみただけだけど」
「概略を勉強しただけで、相手の詠唱魔法を見抜いて最適な防御行動を即座に知らせるとか出来ないわよ。
魔法使い殺しも良いところだわ。
この間倒した敵の四天王の1人、かわいそうになるくらい全ての手が封じられてたじゃない。あなたによって。」
「……いやだってさぁ……」
「だいたいおまえがいなくなったら野営で誰が飯作るのさ」
「勇者おまえが作っても良いんだぞ。村に居る頃からみっちり仕込んだじゃないか」
「無理。見よう見まねで作ってみても、おまえのと全然味が違うんだもん」
「ぐ、昔から一生懸命教えたのに、なんでさ」
「君は誤解しているよ。
勇者の作る食事は決してまずくない。
ただ、君の作る食事に及ばないので、出来れば君に作って欲しいだけなんだ。
君の食事と勇者の食事は、超高級王族向けレストランと貴族向けレストランくらいの違いがある」
「それ、あんまり違わなくね?何なの?皆すんごいグルメなの?勇者の料理の評価も高いし勇者作でよくない?」
「「「「よくない!」」」」
「……てか、魔素無しで役に立たないから飯当番進んでしているつもりだったんだけど。
てっきり役立たずだから飯当番をして、体力も無いから交代の見張り当番もないのかと」
「寝てても見張りの盗賊より早く敵の接近に気づいて飛び起きてくるおまえを、わざわざ当番で起こしておく必要を感じなくて」
「……」
「さてと、そんな訳でこいつも酒が足りてないようだし、こっからは更にペースを上げて飲むぞー!」
「「「「おー!」」」」
「……」
これは後に「魔王と勇者の時代」を終わらせ「エンドブリンガー」の称号を持つことになる英雄が、まだ「勇者パーティの何でも屋」「1パーティに1人欲しい」「努力の鬼」「魔素無しって何だっけ」「逆レベル詐欺」「裏勇者」と呼ばれていた頃の一幕である。
一言で勇者パーティの気持ちを書くと、「彼を捨てるなんてとんでもない!」
勢いで書いてしまいました。
設定ばかり膨らんで何もかけないので、シンプルに書いてみました。
裏設定はあるけど表現する力がまったく無いです。