悪夢の日 5
ユナは少しだけ考えて、ゆっくり口を開いた。
「私、お兄ちゃんがいないなら、行きたくないな。。」
父は困った顔をした。
「ユナ、聞き分けなさい。お兄ちゃんはまだこの世界にしがみつける。でも、お前は」
「わかってる! けど、わかんない! 急にお兄ちゃんとお別れなんて、嫌だよ、、」
僕は泣いたユナの顔を見るのは久しぶりだった。いつも楽しそうに笑っているユナが泣いている。心が一段階重く感じた。胸が締め付けられる。僕は心の中ではわかっていた。僕が冥界に行くと言えば、すべてが解決する事を。「僕は、、」口に出そうとしたその時。不思議な風と共に鋭い声が聞こえた。
「それでいいのか! リーガン・リリック!」
魔女だった。
「リリックの父、ベルセルク・リーガン。お前たちの好きにはさせない。正者はこの世で抗ってこその正者だ。」
父は大きく舌打ちをした。あくまでも穏やかだった父の目つきが変わった。
「迷子の魔女だな。立派になったものだ。部外者は黙っていてくれ。」
父は続けて言った。
「時間が無いんだ。ひとまず、2人とも冥界に連れていく。」
父は一瞬で僕の肩を抱いた。トロトロと影に溶ける不思議な感覚の中で、魔女が激高して叫んでいるのが聞こえた。
「甘い甘い!私が何も知らないとでも思っているのか!冥界に行けばもう戻れない!とりあえず。いったん。ひとまず!耳障りのいい言葉を並べて、私たちをその気にさせて!お前が決めろ、リリック・リーガン! いいのか、お前までそっちの世界に行っても!」
手足に電気が走ったようだった。意識が冴えてすべてがスローモーションに感じた。僕はこのまま父と冥界で過ごすのか?何も為せず、この世から去るのか?
「僕はこの世界で生きていく。ごめんな。ユナ。いつかお前を取り戻してみせるよ。」
ユナの額に自分の額をくっつけた。いつか前にこんなことしたっけか。
父が悔しげにつぶやいた。
「魔女の加護か。先手を打たれていたな。、またいつか会うだろう。我が息子よ。」
影が消えると、父もユナもいなかった。
第一部は終幕です。これを読んでくださり、本当にありがとうございます。