悪夢の日 3
18時きっかりにベルがなり、父と妹は帰ってきた。
「たっだいまー! 突然ごめんね、お兄ちゃん!でもでも聞いて、お父さんが帰ってきたの!お父さんと旅行してきた! 楽しかったー!」
帰宅早々、テンション高めの妹に押し倒され、僕は戸惑った。昨日まであんなに元気がなかったのに。これは一体どう状況だ、?
「驚いているようだね。リリック。キットナップツアーはもう終わりだ。」
聞き覚えのないはず、けど何故か知ってる声だった。見上げると玄関先に父が立っていた。
「全てを話す時が来た。時間がない、けど、コーヒーだけは入れよう。」
何なんだお前は。さっさと出ていけ。そう言いたかったけど僕は口に出せなかった。わからないことだらけだ。話を聞くしかない。父は淡々とコーヒーを入れ、僕の向かいに座った。
「さて、何から話そうか。私のこと、ユナのこと、この世界のこと、そしてお前のこと。色々話してやりたいのだけど、あいにく時間がない。予想よりも早く、お迎えが来そうだ。」
父は心なしか緊張しているようだった。
「お前もユナも祝福は受けられないだろう。それはお前が人間ではないからだ。お前は、、」
父は一息ついて、コーヒーを啜る。美味いな、とつぶやいた後、つづけた。
「お前は、冥界の住人だ。」
一瞬の間の後、自分に反応を求められたことに気がついて、戸惑った。いや、ずっと前から戸惑いっぱなしだったけど。え?俺、死んでたの?
「少し違う。命があって、自ら考える力があるという点で、お前は生きている。世界にいる冥界の住人は不幸だ。必ず虐げられる。教会に祝福が与えられなかった時点で、お前が世界の住人じゃないことが知られてしまった。私と一緒に冥界で暮らそう。ユナも一緒だ。」
、、一緒に暮らす?冗談じゃない。ユナも一緒だと?嫌な汗が全身を襲う。僕は慎重に言葉を選んだ。
「ユナと、冥界に行ってたのか?」
「そうだ。ユナは私の血を濃く受け継いでいる。世界で身体を保つにはあとせいぜい1年だった。」
「冥界で暮らすって、どういう意味だ?それは、死ぬのと同じじゃないのか?」
「似たようなものだ。死んだら、天界か冥界かに連れていかれる。それが必ず冥界になるようなものだ。」
「じゃあ、お前はユナを殺したのか」
父は嬉しそうにこう言った。
「そうだ、君のような勘のいいガキは大好きだよ。」