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エトワール・モンド  作者: 篠芽 えりす
第一章『不思議な力との出会い』
4/5

超能力者の学校


「もうすぐ着きますよ、坊っちゃん」

小型の船乗りがそう告げたのは、太陽が真上に昇った頃だった。お日様の力があっても真冬の寒さはどうにもならない。

「もうすぐ着くって…何もないんだけど」

と言っておきながら、何もないことはなかった。船が進むたびにパキンパキンと氷が割れる。流氷だ。辺り一面にはりめぐされていて寒さをより一層激しいものに感じさせられる。確かに俺がもっと元気に観光で来ていたとなればテンションも上がったろうに。今回は別の目的だからそんなに気分は上がらないが、そう思えたくらいにはこの景色は美しく、感動を与えてくれるものだった。

他には…と目を凝らし見当たるものを探したが、残念ながらあるものといえばそれだけだった。島も見えない、人もいない。このままサメに喰われて死んでしまうのではないだろうかと不安になる。いるのかわからないけど。

「学校があるなんてやっぱ嘘だったんじゃん。あのボート野郎」

全部船乗りのせいにして甲板を蹴った。


ここへやって来た理由とは一年前に遡る。あの不思議な夢を見てから俺の平凡な日常は覆された。本当に予知夢を見るようになったのだ。

夢の中で急に天気が荒れて傘をささずに喜んでいると、現実では台風直撃で怠かった体育祭が中止になったり。鍵を開けられる夢をみたら母さんに勝手に部屋に入られ隠していたエロ本を見つけられたり。花が咲く夢をみれば花壇の黄色い花が咲いたり。まぁここまでしか聞かなければ単なる偶然で済ませられるだろう。だがそれと同時にニュースになる事件を夢で断片的にだが見ることも多くなった。

これは間違いない。予知夢だ!そしてそれを駆使して世界を救うヒーローだ。わくわくする。この力は絶対に活かさなければ損だろう。

母さんにめちゃくちゃ頼んで外国に留学することの許可を貰った。ロウス国なら超能力者を育てるのに有名な機関が多く存在する。世界中で活躍する一流の超能力者だって少なくない。こうして非現実とされてきたものが活躍するようになったのは、昔ほど信じない人間がいなくなったからといえる。最新の研究では超能力とは科学で証明できる可能性があることが解ったらしい。

善は急げ、でここまで来た。そしてこうして遭難しかけている。

「何してんだ坊っちゃん。今トンネルの入り口開くから避けてくれ」

トンネルとは何だろう。聞き返す間もなく船乗りの男が海から縄を掬い上げ、それを引っ張った。ガコンという音を聞いた瞬間に、地響きのような唸り声をあげながら海が割れていく。やがて四角い箱の形に口を開けた海を見て呆然と俺の口も開いていた。

「こっからは飛び込んでけ。気ぃつけろよ、じゃあな」

「は!?飛び込む??ここに??」

嘘でしょ、無理でしょ、死んじゃうでしょ、と口から出るのは渋る言葉ばかり。痺れを切らした船乗りが俺の背中の部分を掴むと、大きな海の魔物に餌をやるように投げ入れる。投げ入れられてしまった。

「ギャアアあぁあああ!!」

命綱のないスカイダイビングである。よくよく考えればスカイではなくシーだが。不思議の国のアリスの気分てこうなのだろうかと思いながら次に襲ってくる衝撃に備えて目を瞑る。

直撃の寸前、ふわりと体が宙に浮いた。おかげでちゃんとゆっくり足から着地できて最悪の事態を免れる事が出来た。

「んー?なんか落っこちてきたな。お前誰だ」

目の前に現れたのは自分より背が高く歳も少し上に見える青年。白い上着の内側にはベルトがいくつも巻かれており、付けていたゴーグルを頭にそらして訊いてくる。

「あ、あの、俺ここの入学希望で」

「プラグリエス学校に?超能力者か?」

「そうです…あ、でもつかえるようになったのは最近なんですけど」

青年は俺をじろじろと一通り見て、よしと言った。何がよしなのかは分からない。

「所長に会わせてやる。ついてこい」

たぶん制服だろう白い上着をさっと翻して歩き始める。大人しくついて行こうと思ったが、暫く歩くと全く面識のない人との無言に耐えられなくなった。

「あの、さっき落下の直前体がふわって浮いたんですけど、あれ何です?」

純粋に疑問に思っていたことを話題に出してみた。ここの人なら何か知っているかもしれない。

「あれは無重力システムだ。宇宙と同じ現象を起こす物質を開発して取り入れたんだ。俺が」

「は、えっ!?うそ、俺とそんなに歳変わらない気がするんですけど」

「超能力者だからな。俺は人より頭がいい」

ふっくっく、と特徴的な笑い方をする人だった。

「凄すぎませんか」

超能力者やっぱりかっこいい。さすがロウス国の発展は目を見張るものがある。褒められたと感じたのか、彼は腕を組んで得意げだった。

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