03
非常に暴力的なシーンです。
書いていて胸糞悪くなりました。
R15指定してますが、気分悪くなると思います。
無理して読まないでください。
2度目のプロポーズから2日後、莉緒は通学を再開した。
本来なら自宅から学校までの15分距離を1人で歩いて通学すべきところだが、篠宮家一連のスキャンダルの発端が莉緒の事件にあることを心配した大人たちが、毎日送迎すると言って大騒ぎした。長らく世間から情報を遮断され自身を取巻く状況を理解できていなかった莉緒は「そんな大袈裟なのはいや!」とごね、「送迎なんて、俺が毎日するから!」と隼人が言い出すと、隼人の通う高校は莉緒と正反対の方角にあることから却下され、最終的には内藤の縁者で隼人の義従兄である大久保大和が担当することになった。
「大兄ぃ、見るな!触るな!近づくな!」
隼人の嫉妬心丸出しの牽制は笑えるものがあったが、下手に「大丈夫だ、触れないから」と言おうものなら「こんな可愛い莉緒に触れたくないなんて、どういうことだ!」と面倒くさいことを言われるだけなので、大和は「お前の可愛い莉緒ちゃんを必ず守るから」と当たり障りない言葉で隼人をなだめた。
そんな経緯で、莉緒の送迎が始まって2週間経った金曜日。
その日、大和は大学3年生から始まるゼミの説明会が入っていて、莉緒の送迎ができなくなってしまった。
都合が悪いことは事前に木下家と内藤家に連絡してあったが、実際に誰が送迎するのか莉緒も大和も隼人も聞かされていなかった。
大和は、大人たちが手配すると思っていた。
大人たちは、大和が隼人に頼むと思っていた。
それぞれが、それぞれの思い込みで連絡が行き届かず、偶然仕事が早く終わった克之が学校に向かわなかったら、莉緒が朝から登校してないことに身内の誰一人として気づくことができなかった。
克之は、その日思いがけず取引先との約束がキャンセルとなり、午後は直帰できることになった。大和の都合が悪く今日のお迎えができないことは事前に聞いていたので、たまには父親である自分が迎えに行こうと急に思いたち、莉緒と大和の待合せ場所である小学校の東門前に向かった。
いつも15:30で約束していると聞いていたが、いつまで経っても莉緒は姿を現さない。防犯用に持たせている莉緒の携帯に電話をかけてみるが、コール音後留守電に切り替わった。行き違いで既に帰宅しているのではと思い自宅に連絡してみるが、妻の奏子は「まだ帰宅していない」と言う。もしや、まだ学校内にいるのではと思い、担任の先生に連絡を取ると「今朝、莉緒ちゃんは学校を休むとお母様から連絡を受けましたが……」と不審がられてしまった。
克之は、全身から血が引くのを感じた。
その頃――。
錆びた金属と古い油のニオイが鼻につく。
やたら体が冷え、背中もお尻も痛くてたまらない。
どうやら、硬く冷たい場所に転がされているらしい。
もぞもぞ起き上がろうとしたが、手足の自由がきかない。
ひどく頭が痛むのを堪えてゆっくりと目を開けると、そこは現在使われていない廃工場のようだった。
時折吹く隙間風は、冷えた体から更に体温を奪う。
莉緒は本能的にこれ以上体を冷やすのは危険だと判断し、体のあちらこちらをぶつけながら、なんとか立ち上がった。
その時である。
「ようやくお目覚めのようね」
若い女の声がした。
驚いて振り返ろうとすると、いきなり後ろから膝裏を蹴られて転倒した。うまく受け身をとることができず、息が詰まって呼吸ができない。動けず横たわっていると、女は莉緒の髪を掴んで無理やり顔を上げさせた。
「あなた、隼人くんの許嫁ですってね」
女の正体は、美しい顔で聖母のように微笑む篠宮玲子だった。
「迂闊だったわ。もっと早く知っていたら、あんな騒動を起こさず徹底的に潰してやったのに」
そう言って、玲子は莉緒の頭を床にたたきつけた。
莉緒の額が割れ、生温いものが流れる。
「あの騒動が何故か週刊誌で報道されて以降、連日マスコミに追われるし、お父様に愛人と隠し子がいたことが発覚するし、家族はバラバラだし、学校にも通えないし……」
玲子は、ぐったりと動けない莉緒を仰向けにすると、その小さな体に跨って襟ぐりを掴んだ。
「なのに、あなたは隼人くんと正式に婚約したですって? 笑わせないでよ! アンタが隼人くんと釣合いが取れると思ってんの?」
玲子は、莉緒の頬を思いっきり叩いた。
「アンタなんか、ガキのくせに隼人くんに色目を使ってんじゃないわよ!」
玲子は、繰り返し莉緒の頬を叩いた。
「アンタがいなければ、アンタさえいなければ……!!」
散々頬を叩かれた莉緒の口と鼻から、血が流れた。
玲子は無抵抗の莉緒の首に手をかけると、力の限り絞めた。
「アンタのせいで私が不幸になるなんて、絶対許さない……」
莉緒がピクリとも動かなくなったのを確認すると、玲子は転がっていた廃材に火をつけて廃工場をあとにした。
気分を害する内容で、申し訳ありません。