召喚、そして
「なんでそんな男の子っぽいのにするの?」
「動き易いから。」
初めて森の外を歩く。
「それにしても…フードまで付ける必要あるかなぁ?」
「急な雨とか、顔見られたくない時にはあった方が良い。」
「…なんでそんな暗殺者みたいな事言ってんのよぅ…」
「良いねぇ暗殺者。」
トラックズバードの羽根で作った為か赤と黒が基調のコート風のマントをリオナは作った。
そして短パン。
上衣はキャミソールを絞っただけでそのまま使っている。
靴はウルフ…正式にはトラックズウルフという種の皮を鞣して作った物。
「もっと可愛いのにしたらいいのに…」
似合っている。
似合ってはいるのだが、チコとしては可愛いリオナを見たかったのだ。
ブツブツと文句を言い続けている。
それを爽やかに聞き流すリオナ。
だが、そんな話しをしていても、二人の足取りが軽いのは見ただけで分かる。
やはり、新しく行ける場所、というのはどこか嬉しくなるのかもしれない。
広大な円形の見慣れたのどかな森から一変、うっそうとした森の雰囲気に変わる。
「…なんでこんな違うのかね。」
「なんか…いつもよりも怖いよぅ…」
「チコ、はぐれたら危ない。タンカスが言ってた森の中の道に出るまで。」
リオナのマントから出された手に、飛びつくチコ。
どうやら本気で怖がっている様で少し震えていた。
胴の所でコアラの様にしがみつき、動かなくなったのを見てリオナは頷く。
「はぐれる心配はなくなったね。じゃ行くか。」
道なりの心配は要らない。
チコの首に付けた、あの小さな水晶玉が光りを伸ばし方向を示しているから。
「リオナ、少しずつ左に向いてる。」
「OK。」
慎重に森の中を進む…でもなく。
普通に歩いていくリオナ。
「怖くないの?」
「そーね。幽霊みたいなのに会えば怖いかもね。」
「えー…」
「そもそも森の中なんだから薄暗くて当然じゃない?」
「そうだけど…でも魔物いたりとかさぁ…」
「…なら怖がりのチコの為に進み方を変えようか?」
「ふぇ?」
「しっかり掴まってなよ。」
言うが早いか。
リオナは手近にあった木に、登る。
そして枝に見事な着地を見せる。
「木の上に登るってどうやって進むのさ!?」
「そんなの枝から枝に飛び移る。」
「そんなアクティブに飛び移れるわけ!?」
「魔法使えば行けるでしょ。」
言うが早いか、枝を蹴る。
本当に枝から枝へ、方角も見つつ飛び移っていく。
「そんなジャンプ力強化な魔法あった!?」
「ん?いや、使ってない。」
「使ってない!?」
「なんかいけてる。あはっ忍者っぽくてたのしー!」
「ニンジャってなにー!?」
チコの絶叫を他所に、リオナは軽快に木々を飛び移っていく。
街が見える頃には、チコも慣れた様子でフードの中に移動し、肩の上でちゃっかり外を見れる余裕を持っていた。
「楽しかった!」
「いや、あんたは乗ってただけでしょうよ…とにかく、森の道は見つからなかったけど。平原には来たねー。」
「うん。この先の街だね。」
平原と森との境だった木から降り。
二人は初めての平原へと足を進めた。