召喚、そして。
「む。むむむっ」
「何してるの。」
「占い師のマネ!…ダメだけど…」
水晶玉の前でタコ踊りの様な動きのチコにリオナは面白そうに見ていた。
「むー!笑ってないでリオナもこれどうにかする事考えてよー!」
「んー?んー…」
チコの可愛い地団駄に笑いながらも、リオナは水晶玉を見つめて。
「…水晶玉、この世界の言葉を教えて。」
「そんなんで出るなら苦労は…」
だがチコの予想に反し、水晶玉は光りを少し強めると文字をたくさん浮かせる。
「出たー!!」
「もしかして最初に触った人の所有って事?」
「なにお!?私も触ったじゃん!!」
「頭で、でしょ。私は手だし。良くあるんじゃない?」
「えー…」
「しばらくは言葉の練習ね…」
「うっ…私の世界の文字じゃない…」
「私のも違う。ま、話す言葉は通じてるよね。水晶玉にもチコにも通じてるんだし。」
「そうねぇ…簡単に読み書き出来れば良いのに。水晶玉そんなのしてくれないかなぁ?」
「まさか。やってみる?」
「ま、そんなのある訳ないだろうけれど物は試しよね!」
「はいはい。水晶玉、私とチコにここの言語の読み書きを出来るようにして。」
遊び半分、のたわいない願い。
だが、水晶玉は光りを先程よりも強めると。
「「読めた!!!?」」
そして二人はまた見つめ合う。
「…私の、私だけの武器欲しい。これ、多分武器系の水晶玉だろうし。」
「武器なの?」
「魔術特化系の魔導具だと思うの。」
「武器って…狐なのに?」
「ほーしーい!!」
「…はいはい…水晶玉、チコに合う武器出して。」
そして言葉通りに、再び光り。
ぽとっと落ちて来たのは小さな水晶玉。
「…ひも付き。」
「なんか別のやつ欲しいー!」
「いや、もう出しちゃったんだから…」
「な、何するの!?」
「何って付けるんでしょ?あ、ちゃんと留め具付いてる。お?」
「ん?」
「存外似合う。」
「えー、ホントー?」
「うん。水晶玉、鏡出して。大きいの。」
光りが壁に向かうと、そこに大きな姿見が。
「ホント、私可愛い!!こんな色だったのねぇ。」
「鏡あると良く分かるね。」
「うん!」
「ふむ。水晶玉、コイツの名前とか分かる?」
「そのトリ?どーでもいいんじゃないの?」
「いや…大事。」
「なんで?」
「倒した相手の事は知っておかんとな。」
「…なんで一々そんな男らしいのよぉ…」
「良く言われる。」
腕組みをしつつそんな事を言うリオナに、チコは本当に自分なのかと疑問に思うのだった。
だが、元々の見た目は似ていた。
人は育ちで性格が大方決まるという。
その違いかと、考察するチコだった。
「文字は壁に出るようになった。」
「見やすくて良いね。で、なんて?」
「トラックズバードって名前ね。討伐難度?4?」
「…そこそこ強い?」
「この星、たくさんあるわ。多分そんなに強く無いと思うね。それから?羽は装飾に使うのね。」
「丁度良い?」
「そーねー。水晶玉、羽から糸作る道具ある?」
リオナの言葉に、たくさんの資料が浮かぶ。
「ふむ。鍋は分からないけども糸車とかは似てるから大丈夫そうだね。」
「作るの?糸を?なんで?」
「布は糸を織って作るもんでしょ。」
「そ、そうなんだ…」
「…」
ぐるりとウロを見渡して。
「よし。ここを家にしよう!」
「本気!?」
「拠点は大事よね!てことで水晶玉!まずは…入り口に扉。部屋をここに幾つか。階段も作ってね!」
「まぁ…ここ快適だしねぇ。」
水晶玉の光りがこの大木を包む。
収まれば、所々窓が付く快適な居住空間へと変化した。
「チコ、窓がそれぞれの方角に出来てる。」
「うん。よっと…」
「落ちないでよ?」
「大丈夫!…ふわぁ…向こうに湖が見える!!」
「本当。…こっちは…山ね。」
「…リオナっリオナ!!」
「んー?」
「こっちの窓からおっきな湖が見えるよ!」
「ん?」
「ほら!」
チコの言葉に振り向いて見れば。
「あれは…海ね。」
「うみ?うみって?」
「大陸よりも大きい湖、なら分かる?この世界が私の世界と同じならしょっぱい筈よ。」
「しょっぱいの!?」
「塩分が多いからね。ま、しばらくはこの辺の把握よね。」
「この世界魔術あるのかなぁ?」
「それも含めて、ね。まずは生活の基盤作りよ!」
子供ながら、頼もしいリオナだった。