召喚、そして。
あれから森の中をさ迷いながら、魔法の練習をする二人。
だが、木々と川以外は見つからず。
遂には夜となった。
「ねぇねぇリオナ。この木、上に大きな穴があったよ。」
「鳥の巣じゃないでしょうね…」
「多分違うよ。」
「その自信はどこから…木登り上手いね。」
「たーのしいよー!」
「流石獣…っていうか獣なのにいいわけ?」
「今の自分はしっくりしてる。」
「あ、そう…別に降りてこなくて良いし。」
「木登り楽しっ」
「はいはい…」
「リオナは…浮いてる?飛んでるの?」
「重力を軽くしてるの。」
「それで浮くの?」
「浮く様にしたの。」
「…えいっ」
「わ!?」
「浮くのも楽しいっ」
「頭…尻尾で目が隠れるから逆向いて。」
「はぁい。」
大きな木の上には大きなウロがあった。
そこはなんとも高く、そして太い木だった。
「おっきいねー…」
「森が見渡せるとか…見渡す限り森ね。」
「だねぇ…あっ!さっきの川!」
「結構遠いわね。」
「あっちは渓谷?」
「というか…この森岩山に囲まれてるね。」
「その先は…まだ森だね。」
「うん。人里は期待出来ないわね。とりあえず寝ましょ。流石に子供の足だと疲れた。」
「うん。」
風で入ったのであろう木の葉を寄せ集め、二人はその山の上で寄り添い眠った。
朝。
「…ふぁあ…」
「…」
寝ぼけ眼の二人は。
一気に目が覚める事となる。
「クギャー!!!」
「キャー!!おっきいトリー!!!」
「やっぱり鳥の巣だったんじゃん…」
「ギャオン!!」
「こっのー!!」
チコが火を吹くも。
翼で簡単に払われてしまう。
火に対する恐怖というものは無さそうである。
「ひぃぃぃ!!」
「チコ。」
「リオナァ!!」
「…これも生きる為だ。申し訳ない。」
「り、リオナ?」
「…大人しく朝メシになりやがれー!!!」
「ギャオン!?」
「えー!?」
威勢の良い言葉と共に、ウロの縁にいた大きな鳥に、綺麗なフォームの飛び蹴りをお見舞いするリオナ。
「まほーはどうしたー!?」
チコの最もな叫びの後。
リオナから強力な雷が流れる。
「カッ…」
「ふん!鶏肉の分際で私に勝とうなんて百年早いわ!」
「…リオナの性格が分かんない…」
「は?何言ってんの?」
「?」
ドンっと今しがた倒した大きな鳥の嘴の先に足を置き。
「食材に負ける訳ないから!」
「…あっ、そう…」
ドーンと言い放つリオナに。
食欲を兼ね備えたリオナは強いとチコは認識したのだとか。
「さーてと。この鳥羽毛がカラフルね?」
「そーだね。主に赤と黒だけど。」
「尾羽は青と黄色って…」
「よし、これで服出来るわね。」
「作るの!?」
「頑張って作るの。ん?」
「どうしたの?」
「ここ、なんか今光った。」
「どれどれー?」
羽毛を掻き分けてチコが入る。
と。
「あいたー!?」
「チコ?」
「なんか頭にゴンッてきた!!いったぁーい!!」
「(表情豊かな狐だな…流石元人間。)この辺?」
「ううう…痛いよぉ…」
頭に前足を置き、後ろ足で座る姿はまだ人間臭さを残している。
そんなチコの姿を横目に見つつ、手で探るリオナ。
「ん…んー…もう、ちょい…取れた!!」
と、落ちて来たのは大きな水晶。
ボール程の大きさである。
「水晶玉?」
「だね?」
リオナが触れると、淡く光り浮く。
そしてウロの端に移動し、佇む。
「何これ…」
「さ、さあ?」
この世界の事は分からない為に、とりあえず放置する二人であった。