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冬の初月の一日
エドがなんだか落ち込んでいる。エルの怪我はエドを庇ってのものだったらしい。
落ち込む気持ちもわからないじゃないけど、それはエルからすると当たり前の行動だとも思う。
だってエドは王弟殿下なのだもの。
エルはエドの乳兄弟で、つまりは側近の臣下だ。同じ状況であれば私だってエルと同じことをするだろう。出来ればという話だけど。
エドに友情を感じていないと言うわけじゃない。エドは大切な友人だと思う。エルにとっては親友を通り越して、双子の兄弟ほどの情を感じている相手だろうなと思う。
でも、それはそれとして。
私たちはエドの臣下なのだ。
それは生まれた時からそうだったのだし、それが誇りでもある。私たちはエドのためなら実の親兄弟と敵対することも辞さないだろう。たぶん、いや絶対に、王太子殿下の臣下である兄だって同じことを思っているはずだ。