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秋の終月の二十五日
そろそろショールなしで出歩きにくくなってきた。
朝の修練の時も最初の呼吸法はちょっと寒い。
兄から、手紙が来た。
宮廷の方で風邪が流行り始めているから、近づかないようにという警告だった。もう試験まで近いので、確かに塔に持ち込みたくはない。
手紙と一緒に体を温める香辛料やお茶を一緒に寄こしてくれた。
せっかくなので検討会の時のお茶は、そのお茶にした。
アジャの葉に色々混ぜたお茶で、ちょっと辛みが強いので砂糖を入れて甘くして飲んだ。飲むと体がほこほことしてくる。
レイラにも手紙が来ているなと思ったら、明日からしばらく実家に戻らないといけなくなったと言ってきた。その呼び出しの手紙だったらしい。領地の方に戻るということなので、荷造りを手伝った。夏向きの薄い衣類はもう全て持って帰るという。考えてみるとレイラは次の夏にはもう、塔どころかリカドにもいないはずだ。
そんな事に気づくと無性に淋しくなってしまった。
アジャもいないのに、本当にどうしたらいいんだろうと思う。
もちろんなるようにしかならないのだろうけど。