秋の終月の十一日
今日はリリーナが検討会を見学したいと言い出したので、イリアや男子部のルイ、グレイやフランたち中位受験組も合同の会になった。
中ではやっぱりルイの意見が面白かった。
魔術師というよりは晶石細工士としての道を極めようと志しているルイは、発想もものの味方も他とは違う。特に魔力の固定化や安定供給に関しては思いもつかない発想と知識を持っている。晶石の新しい利用法についてもいろいろかんがえているらしい。
何といっても今回の試験で中位を得た上での留学をかんがえているので、中位受験者の中でも気合が違う。
そうそう、予告どおり兄も来た。
干した果物を焼き込んだケーキとか、アジャ蜜を練り込んだパンとか、ひき肉の包み焼きとかのいっぱい詰まった大きな籠を両手にぶら下げて。
我が兄ながらこの如才のなさは賞賛に値すると思う。
見た目が朴訥としたタイプなだけにポイントが高い。
当然お茶会になった。
そこで、兄が聞き捨てならないことを言った。
地方ではまるで規定の事実のごとく、王太子様と第三王子殿下の養子縁組が噂されているという。
「王太子殿下はお身体が弱いからお後継ぎは到底望めない、なんてご本人にお会いした事のないやつほど言うな。俺は否定しているが。エレインの王女の輿入れが遅れてるのもそのせいだって話になってる。」
なにそれ。
ザヴィータがいらない口出しをしてなきゃ、とっくに話は進んでたはずなのに。
「そういう機微は中央にいなけりゃわからんよ。地方にとっちゃ結局他人事だからな。」
「でも、ちょっとまずいですよね。」
グレイが言うと、兄が頷いた。
「政には関係ないようでいて、こういう噂は殿下の権威に関わる。単純な話なだけにな。いっそアマリエあたりが早めに一人産んでくれりゃ、立ち消えになるんだが。」
「それはだめだと思う。エレインの王女様の話が一層こじれるし。」
そう突っ込むと女子が全員頷いた。
リリーナなんか真っ赤になってる。
「だよなあ。そうなるとエレインの姫君にとっととお輿入れ頂いて、その姫君なりアマリエなりにさっさと産んでもらうしかないなあ。」
話は単純だけど簡単じゃないというのがちょっと面倒くさい。




