秋の終月の二日
秋も終月に入ると朝晩は冷えるのが当たり前になる。
この季節になると栗が美味しい。アリアの婚約者が木箱に一杯寄こして来たというので、ありがたくご相伴に預かった。
暖炉の火のそばに転がして、パチンとはぜたら火箸で取り出す。みんなで火のそばに座って栗を焼いていると、冬も近いんだなあという気持ちがしみじみとする。
アリアの婚約者の家の領地は海辺の山沿いにあって、栗がたくさん取れるのだそうだ。
ホクホクの栗をつまみながら、アリアの結婚の話をたくさん聞いた。塔に入るくらいだから結婚を急いでいる者はいないけど、それでも関心は高い。
どこからのお話で、何回ぐらいお会いして話が決まったのか。相手のご家族はどうなのか。花嫁道具はどうするのか。新居はどこになるのか。
「そういえば、マリーダはどうするの? お話は来てるんでしょ。」
レイラが好奇心満々の視線を向ける。
「え、私?」
いきなり話題が飛び火したのに、マリーダが戸惑った。
「そりゃないことはないけど。」
レイラがマリーダに話を向けたのは、一応理由がある。マリーダはライラと並んで女子部の最年長者なのだ。次の新年が来れば十九になる。
「でもまあ、親もすごく急かしてきてるわけでもないし、今はまず昇級試験かなあ。」
レイラには結構縁談が来ているそうだ。私と同い年だから早すぎるわけではないけれど。
「塔に入らなかった友達がこの間出産したのよね。そしたら親が縁談を持ってくるようになっちゃって。」
二十歳になると縁談が減るなんて話もあるから、塔に入った者の親も結構複雑なのかもしれない。
そういう意味では魔術師資格の取得に熱心な我が家は楽だ。




