秋の終月の一日
今日はまた、肌寒い朝だった。
服を身につけるとひやりと冷たい。ショールを肩にかけて談話室にいくと、今朝はまだ誰もきていなかった。
暖炉に火を入れてお湯を沸かす。
お茶のはいる頃にリリーナが起きてきた。
作りおきのパンケーキを軽く炙ってあたため、アジャ蜜をかけて出すと、リリーナがお礼言ってもそもそ食べる。
リリーナは寝起きがあまり良くない。
目が覚めてしばらくは使いものにならず、朝食が消化されるまでは半分以上寝ていると、自分でも言っている。
夕食は必ず食堂で食べるけど、朝食はこうやって談話室で食べるのが好きだ。特に暖炉に火を入れていれば、パンやパンケーキを温めるぐらいは簡単にできるし、起き抜けに身だしなみをきっちり整えて食堂まで行くよりずっと楽だ。
自分の分も用意して食べていると、アリアとマリーダが来た。二人はどちらかというと朝食も食堂に行く派で、とくにマリーダは朝からガッツリ食べたい方らしい。食堂でなら燻製肉や卵、魚の塩漬けなんかを使った軽い料理も出るし、スープなんかもある。
なので二人はお茶だけを飲んだ。
レイラとイリアはパンケーキを炙ってたべたけど、レイラはスープが飲みたくなったそうで、マリーダ達について食堂に出かけていった。
食後の朝の課業はまず塔主さまのお目見えから始まる。
玄関のホールに塔の魔術師が集まり、塔主さまに朝のご挨拶を申し上げる。ただ、ここしばらくは塔主様が宮廷に詰めておいでなので、塔主代のアイラさまが代役をつとめられている。
それからそれぞれに塔から与えられた仕事をこなし、それがなければ自分の課題をこなす。
塔に入って最初に与えられる仕事は掃除と決まっていて、これが結構難しい。魔術を使ってできるだけ効率よく、というのが課題だからだ。手でかければかんたんな雑巾がけも、魔術でやるのは慣れていないと難しい。今はリリーナがやっているけれど、光の宴の前ぐらいからやっと効率を考えられるようになったらしい。なのでリリーナの課業はもちろん掃除。試験を受ける者はそれぞれそのための準備をする。
昼に談話室に集まってお茶と軽食で一服して、午後の課業のあとは食堂で夕食。
毎日おんなじような繰り返しだけど結構忙しい。
今日の夕食は肉団子の煮込みと、芋のチーズかけグリル。玉ねぎを焼き込んだパンだった。
夕食後はみんなで蒸し風呂でお茶をしてから休む。
今日はごく平凡な一日だった。




