表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアーナ=エリシアの日記  作者: 真夜中緒
昇級試験編
63/407

秋の中月の二十五日

 朝、目が覚めて起き上がるとなんだか肌寒いと思った。考えてみるともうすぐ秋の終月だ。朝晩は冷えてもおかしくない。

 談話室ではアリアとマリーダが温かいミルクティーを飲んでいた。

 「おはよう。今朝はなんだか小寒いね。一緒にどう?」

 よろこんで混ぜてもらった。

 いれてちょっとたっているらしいお茶は熱すぎなくて、心地よく温かい。寝ぼけ加減の体が奥の方から解れて目を覚ましてくる感じ。

 ちょっと寒がりのアリアは肩にショールをかけている。マリーダはいかにもマリーダらしいゆったりとした仕草で、本を読んでいた。

 マリーダの髪は赤味がかった金髪で、何もしなくても緩い縦巻きロールになっている。その髪を首の後ろで無造作にくくっているのだけど、幅広の赤茶のリボンの下に縦巻きロールが下がっているのは結構さまになっている。

 しばらくすると、今日は外出する用事があるとかでアリアが自室に戻っていった。

 「婚約者の家に招かれているらしいよ。」

 そろそろ話が本格的に動き出しているらしい。

 「ねえ、」

 マリーダが読んでいた本から目を上げて、声をかけてきた。

 「上位試験に受かったら、エリシアはどうするつもり?」

 中級上位の試験に受かったあとの進路はいくつかのパターンがある。

 一つがそのまま塔に居住しながら縁談を待つという方法。

 塔に居住していれば、感謝祭や新年の宴の時に謁見の場に並ぶので、見初められることも多いからだ。

 もう一つが塔を出て縁談を探す方法。

 塔に残って塔付きの魔術師として働く道。

 そして更に学んで上級資格を目指すという道だ。

 後のふたつを取るものはリリカスの女子部ではほとんどいない。リリカスの女子部は基本的には貴族の令嬢が所属するので、結婚することが前提になっている。だから結婚条件が難しくなる上級資格を目指したりはしないし、塔付き魔術師になることもまずない。

 ただ、私はそのどれとも違う進路を考えている。

 母の下で女官になろうと思っているからだ。

 普通は結婚してから婚家の名前で出仕するものだけど、我が家では事情が違う。母は結婚する前から女官として出仕していたし、父は入婿だ。我が家は代々女官長を務めていて、私も幼い頃から女官長になるべく育てられている。今ではその目標は代々務める我が家の役職というだけでなく、はっきりとした私自身の志望になっていた。

 私は女官長として、王太子様を、王弟のエドを、支えたいと思う。

 私ならリリカシアとなったアマリエ様と連携して、宮廷を支えていけるとも思っている。

 だから、マリーダにははっきりとした答えを返せた。

 「女官になります。」

 「そっか。そうよね。」

 それだけで、マリーダはまた本に目を戻した。

 そういえば、マリーダはどうするつもりなんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ