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夏の終月二十九日

 感謝祭の準備を続けている。

 いつも通り魔法陣を用意していたんだけど、誰ともなく気づいた。これ、誰が連動させるの?

 アジャならできる。いや、アジャがいるからこういう方法を使うようになったのだった。

 あちこちに仕込んだ魔法陣が連動して色鮮やかな光を放つ。

 それはもうきれいだけれど、アジャなしには無理じゃないかと思う。

 それでみんな、頭を抱えてしまった。

 「分担してみるとか」

 「無理だって。手が足りないよ。」

 「アジャの連動魔術ってほとんど神業だったから。」

 「あの」

 控えめにリリーナが口を開く。

 「アジャさんってどんな方なんですか。」

 どんなって。

 みんなで顔を見合わせてしまった。

 小技の調整が下手で、むやみと大量の魔力放射と連動を得意とする、新米上級魔術師。

 性格は大雑把で変な根性があって、あまり物事にこだわらない。

 どうしよう、これだけだと褒めてるようには聞こえないような。

 「そんなに強い魔力をもってるんですか。」

 「ああ、そっちか。」

 マリーダが答えた。

 「そうだね。強いよ。魔力の強さで言えばあたしらが束になってもかなわないどころの話じゃない。」

 「それは、「申し子」だからですか?」

 「さあねえ。わたしもアジャ以外の申し子って知らないから。アジャのことならエリシアの方がくわしいよ。塔に入る前からの付き合いだから。」

 アジャの操る魔力は桁外れだった。ただ、操れるようになるまでが本当にたいへんだった。

 出会ったばかりの頃、薬草の調合時に魔力が暴走して、べそをかいていたのを覚えている。もともと、魔法陣を連動して過剰な力を逃す技は、アジャが塔主さまと一緒に考えた苦肉の策だった。ある程度使いこなせるようになってからはいたずらに使ったりしていたけれど。

塔に入ってからのアジャは少々大雑把でも、優秀な魔術師だったと思う。初級中位から上級までを三年足らずで駆け抜けた。上級の階位試験は飛ばして受けることができないから上級初位だけど、実力でいえば上級中位は堅いだろう。もしかしたら上級上位でもいけるかもしれない。魔力の強さだけで言うと塔主様も含めて、リリカスの塔にアジャより強い者はいない。

 「私も申し子ってアジャしか知らないんだけど。」

 リリーナに考えながら答える。

 「申し子も結構大変なのよ。アジャはそうだったもの。」

 本当に、今何をしてるんだろう。

 それから、

 アジャ抜きでどうやって感謝祭を乗り切ろう?

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