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秋の初月の二十三日
イリーナが転移魔術に苦戦している。
あれ、うまく言えないけどコツがいるのだ。
元々魔力が大きすぎて暴走ばかりさせていたアジャが、必要以外の魔力を逃がして暴走を抑えるために編み出した方法だから、普通に魔法陣を使う、というのとはちょっと違う、力を「流す」ような感覚で使わないといけない。
今回の場合で言うと、組み上げた「花」をそのまま流して発動させるような感じになる。
イリアも苦手なんだけど、一応は使える。イリーナの辛いところは何と言ってもアジャが転移魔術を使うところを、見たことがないということだと思う。
アジャを見てるとわかりやすいのだ。力の流し方のコツみたいなものが。
私なんかが使うと、力を全部一つの魔法陣に注ぐ事になっちゃうので、流してるんだかなんだかわからなくなってしまう。
これでも私はアジャを除けば転移魔術は得意な方なのだ。アジャがあの方法を開発するところを、すぐそばで見てたんだから。
使えるようになるとアジャじゃなくても結構便利な魔術なんだけど。
とりあえずイリーナには頑張ってもらうしかない。




