秋の初月の二十日
終わった。
衣装が縫い上がった。
本当に、ものすごく頑張った。
最後の衣装を仕上げてかけると、みんなしてへたり込んでしまった。しばらく針は持ちたくない。
必要最小限の刺繍を施して、晶灯をつけただけの衣装だけど、この場合はこれで役に立つはずだ。何よりこれより凝った衣装だと数を揃えることができない。
感謝祭まであと二十五日。
飾り付けの配置を決めて、音楽に合わせて晶灯の使い方を決めて、さらにしっかりと練習もして。
やることはまだまだいっぱいあるけど、今日はもう他のことはせずに休憩することにした。
果物とお茶を用意して全員でお風呂に向かう。
ゆっくりとお風呂に入るのは久しぶりで、皆でいっぱいお喋りした。
一番の話題はアリアの結婚だ。
お相手は近衛隊の軍人だそうで、結婚してもリリカス住まいになるという。
すでに二度、お会いしているそうで、五歳年上の真面目そうな人だそうだ。
「マリーダもそろそろお話があるんじゃないの?」
話をふられるとマリーダが頭を掻いた。
「そうねえ、ないわけじゃないけど。せっかく塔に入ったしちょっと色々考えてるかな。」
マリーダの親はまだ話を急いでいないのだろう。
結婚すれば宮廷に上がったりも出来るようななるが、相手による制約も多い。どちらにしろ決めるのは親だけど、なかなか難しいところだと思う。




