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春の初月の二日
昨日と違ってのんびりした日だ。
リリーナとイリアは昼から実家に帰ってしまったので、今夜の談話室には私しかいない。
ちょっと、かなり寂しい。
なんだかくつろげなくて、早々に自室に引き上げてしまった。宮廷のおかあさまの部屋に行ってもいいんだろうけど、おかあさまは忙しいのでどうせいない。おとうさまもにいさまもどこに今いるのかはわからないし、特に会いたいわけでもない。
無意味にウロウロするぐらいなら、塔の方が落ち着く気もする。
自室にいる分には一人なのが当然だから、まだくつろげる。
それで自室で本を読んだり刺繍をしたりして過ごした。
いつだったか送ってきた、アジャからの紫の糸を眺めて何を縫おうかと考えたりするのはちょっと楽しい。
本当の取っておきに使いたいんだけど、いったい何なら本当のとっておきと言えるのだろう。