冬の中月の二十六日
レイラとマリーダが来た。
いよいよ三十日にリカドを発つそうだ。その日は女子部全員で港まで見送りに行く約束をした。
レイラは作り始めていた新年の飾りを作るのを手伝ってくれながら、おしゃべりをした。
お相手は次の新年に三十歳を迎えるそうで、多少歳が離れているが珍しいというほどではない。いつだったかザヴィータ大使夫人に言われた女性問題は気にならないわけではないけれど、その年まで何もないのもどうかと思う。結局なんだかんだと言っては見ても、あったことのない相手は未知数だとしか言いようがない。
「本当に駄目なときは、帰ってきてください。」
とても真面目な顔でリリーナが言った。
嫌なら帰るというような、簡単な話のわけはないけれど、本当に駄目だとなったら、確かに自分で帰って来ることはできる。
私達はみんな中級魔術師で、自分の魔術で稼ぐことだって出来るのだ。現に私達の一人は、世界を渡る旅をしている。
アジャは上級魔術師だから、もちろん私達とは違うのだけど、それでも塔にある依頼の殆どは中級魔術師あてのはずで、それなら私達にもこなすことは出来るのだ。
本当に、どうしても嫌で駄目なのならば、それを私たちに強制できる者はめったにいない。私達は中級魔術師なのだ。
夕方までおしゃべりして、レイラ達は帰っていった。
結婚は幸せであるに越したことはない。
どんな思惑だって結局そこは動かせない。
レイラの結婚が幸せであることを願う。