Second Day. /Ⅰ/ 『遊戯』
ここは森の中。葉々から漏れる木漏れ日が気持ちいい朝。木こりは今日も大木を切っている。
ザクッ、ザクッ。
切っているというよりはむしろ削るのに近かった。だか、その音はとても心地よかった。
ここは海の中。水面が幾重にも幾方向にその眩い光を差し込む。ああ、なんて美しいんだろう。
僕は海の底へゆっくりと沈みながらその細長い手をそっと天に差し出した。手のひらを広げては閉じ、閉じては広げた。
光は次第に消えていく。
突如恐怖が僕を襲った。光が目の前から消えたのだ。暗い暗い海の底に僕はついた。寒い、苦しい。
だから僕は水面を目指し泳いだ。泳いで、泳いで溺れた。だけど水は、光は僕を優しく包み込み僕をまるで鳥の羽のようにゆっくりと上に上げてくれた。水面が目と鼻の先まできて顔を地上に出した僕はーーー目が覚めた。
眠るということは水の中にいるときに似ているらしかった。
チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえる。
僕は目をパチクリさせながらぼんやりとしていた。
ーー 今日も生きていた
藁のむず痒さに耐え兼ね、僕はゆっくりと起き上がる。
洗面台も風呂もトイレもないこの部屋は実に殺風景だった。あるのは藁を敷いただけの寝床とドアに立てかけられたタンスだけだった。
そのタンスは僕を現実に戻した。そう、僕は、僕は。
ー ー何を呑気に寝ているんだ。早くここから離れないと。
急いで支度をしようとしたが、何せ何もない部屋なので持ち出す物もなかった。身なりは昨日のままのボロボロの姿で清潔という言葉からは最も遠い存在とも思えた。
僕はタンスを扉とは反対の方へ倒すと部屋の外に出る。タンスの倒れる音はこのコテージの悲鳴そのものだった。両隣の住人が苦情を言うこのごとく壁を力強く叩くのを聞くと
「ごめんなさい」
とだけ謝って外に出た。
コテージの廊下は人が一人通れないくらいの狭さで、突き当たりの格子戸はすでに壊れていた。
僕はその窓を左に曲がろうとしたが、ふと不思議な感覚が沸き起こった。
僕は部屋の方に戻り、長年を共に過ごした風化しすぎている自宅に感謝と惜別の意を述べようとした。
が、感謝を述べる間も無く背筋が凍りついた
。
全身体が震えだす。
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赤黒赤黒赤黒赤黒赤黒赤黒赤黒赤黒赤黒赤黒
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ーーー恐怖。
ーーーーーー ーーー恐。
ーー怖。
扉に、入り口に、描かれた、掘られたドス黒い文字。
『GAME has began.You have only to escape.by J.R.(ゲームは始まった。まぁ、お前は逃げるだけだがな。切り裂き魔より)』
そしてその文字列の上には『3』の数字が深く大きな『×』で切り刻まれていた。
その下には『2』が赤々と荒々しくそれの代わりにそこにいた。
『2D』