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ミ/re/タ/v/o/ビ  作者: 目咲 ゆう
Three Days.ー逃走ー
2/6

First Day. /Ⅰ/ 『始まり』

ガォォーン グオォーン


時計台の鐘はまだ浅い闇の中で低く力強く鳴り響く。


人々は歩き、歩く。


人人人。


英国紳士は葉巻を蒸し、麗しき女性たちはドレスを捲り上げ足早に去って行った。

埃と誇りと煙が鼻をかすめる。

その色、匂い、風情。誰もが潤むその雰囲気はとても--------------


「キャァァァァ」


その金切り声、叫び声はロンド中に広がる、賑やかな静寂を切り裂いた。


********************

**「Whats' happened?」*********************「⁈」********「JACK.JACK has appeared」***「⁈」**********************「someone was killed!」***「‼︎」**********************「JACK is!」***********************「‼︎」***********************


口々に声が湧き上がる。 街は騒がしくなった。


一人の女性が走ってきた。顔がひどく青ざめている。その女性は走って駆けつけた警官にしがみ付くように抱きついた。彼女ははじめに叫声をあげた、初めに死体を発見した女性だった。


********************


僕はその悲鳴を聞いたと同時に心の奥底から湧き出る悪魔のような感情を抑えられなかった。


僕は微笑む。


「リッパー、切り裂き魔ジャック・ザ・リッパーが出たぞ!」


バンッ。


僕は大声で叫びながら走ってくる髭面の男とぶつかった。

何事もなかったように僕は歩いたが、男はまた叫ぶ。


「君!そっちは危ないぞっ!」


わかっているという意味を込めて僕はコクコクと頷き、進行方向を変えないまま進んでいった。

男は首を傾げながら走りさっていった。


あたりの人という人は皆、走り、逃げて

いた。何人ともぶつかった。その度に僕の懐は満たされていった。


********************


僕が殺人のあった現場に着いた時、あたりは警官と野次馬で溢れかえっていた。

野次馬はみな命を守ることより、その事件に対する好奇心が勝ったのだろう。皆、我先に見ようと必死である。

もちろんもうここに殺人鬼はいなかったが...。


人が二人通れるほどの路地に一人の若い女性が、死んでいた。その若さを象徴するような真っ赤な鮮血が彼女を優しく包んでいた。


そして、その周りを警官が取り囲んでいる。


僕はその事件に関して、どこか他人行儀な恐怖とわずかな緊張を覚えた。だが、人一倍何も感じなかった。


ただ、


ー切り裂き魔ジャック・ザ・リッパー様々だな


とだけ思った。


僕は普段から使い慣れた近道を使って自宅へと向かった。


********************



「今日は何が食べられるだろう」


かつて、僕は飢えていた。死にかかっていた。そんなとき僕が覚えたのは...。


今もなお、僕は飢えていた。貧しかった。辛かった。今すぐにでも死にたかった。

だけど運命は残酷で僕には死ぬ勇気も度胸も死ぬことができるような運も与えなかった。


僕の腹は、懐は膨れていた。


あたりに人がいないことを確認すると、ボロボロの緑の外套から十数個の財布を取り出した。


僕が覚えたもの、育てたもの。それはスリの技術だった。生まれて17年(正確にはわからないが)の技術には到底見えないが、己の生死が関われば人はあり得ないほどの成長を遂げる。

それが僕にとってはスリだっただけのことだった。


ふと僕は近くの窓を眺めた。そこにはドロドロに汚れた顔と、栄養が取れていないのか以前から伸びないままの髪があった。色はもう黒とは言いがたいほど汚れていた。

それでも身体はまだ、少し痩せているだけで特に目立つような飢えをみせることはなかった。


「クソッ」


僕はそう言い捨てる。

できる限り裕福に見える人間を選んだつもりだったが彼らの財布には一食も食べられるか食べられないかというほどのわずかな金額しか入っていなかった。

寄せ集めても三日と持たない額だった。


********************


抜け道から大通りに出ると商店街は何事もないように平和だった。主だって客引きの声と値引きする、という案内の声が響いていた。

今日は霧が出ていないから稼ぎ時なのだろう。

僕は八百屋で真っ赤なトマトとパン屋で安くて長いパンを買うとまた違う抜け道で家へと向かった。






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