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昔々そこでは様々な人が様々な国が、様々な理由を持って戦争をしていました。いつも通りたくさんの兵士が戦争をしていると突如美しい女神が現れました。そこではいつでもたくさんの人が現れては消えていました。
当時誰もが
女神もどうせ消えるだろう。ここにいられるのは醜い兵士だけだ。
そう思っていました。しかし、女神が来てから兵士の持っている兵器は兵士の意志に関係なく女神に操られるようになったのです。自らの兵器と兵士の兵器を手に入れた女神は口を開きました。
『ーっ』
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「先輩ー、出来ました!」
ライフライン、様々なインフラ設備、我々の生活の隅々に行き渡ってしまっているコンピューターとそれらによって構成されるインターネット。それらは通信規格、暗号規格の絶対的安全性と呼ばれる万人が信じて疑わない儚い神話によって成り立っている。まだ所有者未確定の領地の多いこの第五の戦場において多数のハッカーが暗躍している。そんなハッカーにすら恐れられる存在。『アイスマン』ハッカーのハッカーと呼ばれる謎の存在。そんな謎の真実っいや、当の本人がいる日本の高校とある部活。
ポニーテールの高校生にしては低めの身長の女子が、そばでパソコンのディスプレイを見つめている男子に話しかける。場所はとある県立高校のパソコン部の部室。部室の中では数少ないクーラーの入った部室だ。そこにはこの部屋に入る人数には不釣り合いな量のコンピューターがある。
「うん、ありがとうさくらちゃん。」
とある高校のパソコン部。結構どこの高校にもあるありふれた部活。実はこの部活人数が少ない。部員は、
「しかし、なんでこんな部員が少ないんだろうね。」
「勧誘をあまり先輩がしなかったのが大きいですけど、ハッカー部なんていっわれちゃってますからね。」
そう、実はこの部活部員が二人なのだ。
一人は、高校二年生の荒木田計。もう一人は、一年生の宮川さくら。
「先輩がね、先輩の武勇伝?のおかげでぼくらはハッカーという汚名を着せられているんだから感謝しないと?ね。」
「そういう先輩だってその洗礼を受けたから今の先輩があるんじゃないんですかぁ?」
「まぁ、確かに先輩のそれも一端を担ってるんだろうけど。でもぼくらは主に対ハッカーハッキングだからね。ハッキングをやる勇気が無いっていうのもあるし。」
ハッカーは金目当てでサイバー攻撃を行う。しかし、それに使われる偽サイト、コンピューターウイルスに対するサイバー攻撃なんて想定してない、よってそれらつまりハッカーは結構脆弱なのだ。
「先輩、それってようするに毒を持って毒を制すって感じですよね。自己弁護ですよね。それってデスノートの夜神月光と同じじゃないですか、同じ理屈じゃないですか。」
「そうだね、確かにそんなんで悪人を倒しても悪人からしてみれば同じことやってる奴に叱られたくねぇーよって話だろうね。でも極論を言うと、いまの法律だって罰としてだけど本来人の自由を奪ったり、命を奪うのは悪だ。つまり、法律だって毒を持って毒を制していると言えるよ。」
こんなアイスマンのいやっハッキング知識の豊富な高校生のハッカーとの違いの一例としてさくらに荒木田が頼んでいた仕事に関することを上げればいいだろう。それには先週に遡る必要がある。
「やっほー、いつも通り暇にしてるかな?」
そう、先週事の初めは松田の訪問だった。松田美優同じクラスで科学部、別にその日が特別だったんじゃなくて松田はよくここに来てだらけたり雑談をする。
「こんにちは、美優先輩。」
「常に暇なパソコン部だがどうしたんだ?」
「いやねぇ、ネットワークバンキングって知ってるかな?あっそうか、当然知っているよね。実はある銀行のそれを語った偽サイトがあってね、まぁそれがある分には構わないんだけど嫌っ構わないって言ってはいけないね。まぁそんなサイトがあったんだけどね、とある検索エンジンって広告料を払えば検索結果とは別に上の方にそのサイトへのリンクを置いちゃうんだよね。もう分かるかな?」
「その偽サイトが詐欺サイトのくせに検索エンジンに金を払って、検索結果の上の方に広告を表示させていると。」
「うん、そう。それでなんだけどね、えっとね、実は、」
「そいつらに、復讐をしてほしいとでも言うのか?ぼくらは警察でもないしわざわざ全部潰してたら世界にいくつの詐欺サイトがあることか。お前、騙されでもしたのか?」
「私の友達なんだけどね、それで騙されちゃって。預けてたお金が全部取られちゃったんだって。少しずつ無くなるならまだしも急に一気に無くなっちゃったからね。」
「松田、復讐は出来るかもしれないけどお金まで手に入れるのは無理だよ。そこまですると足がつきやすくなる。」
「大丈夫、大丈夫依頼は復讐だけだから。」
松田が出て行ったあとでそのサイトを見る。そして、そのサイトをさくらに調べてもらっていたのだ。
「やっほー、暇かな?」
先ほど話した依頼主が何ら悪びれる事もなく現れた。
「松田のおかげで仕事があって忙しいよ。」
「どうされたんですか?美優先輩。」
「いやぁ~ねぇ、進捗状況を見にきただけだよ。どういうプランになるのかな?」
「あのサイトは完了ってボタンを押すと本物の銀行ページに行くようになってたし、CSRFっていう方法を使おうと思う。」
松田が首をひねる。
「ウェブサイトではフォームに入れた内容をサーバーに送る、という通信をおこなっています。簡単に言いますとこれを別のサイトがさも本来のサイトからの通信かのようにそのサーバーにフォーム内容を送りつけます。送信元をチェックしてなければその内容もうけとっちゃうんですよね。しかも偽通信元の場合大体そのフォームを隠しています。」
そして松田にディスプレイを見せる
「そして、さっき作ったけどこのウェブサイトにアクセスするとランダムな値を入れたフォーム内容が送信される。あとは今までに操作権限を奪っておいたbotに感染しているコンピューターからアクセスさせればいい。これで無意味なデータが大量に詐欺師に送信されて必要なデータが得られなくなるだろう。まぁ脆弱性を塞がれたら終わるけど、詐欺師はそうする前にこのサイトを捨てるだろう。」
そういってボットに命令を送っておく。ついでに掲示板にもURLはっておくか。
「CSRFってクロスサイト何とかってやつなのかな?」
「先輩知ってらっしゃったんですか?」
「いやね、フォームに対する攻撃ってクロスサイトスクリプティングしか知らなかったからね。」
クロスサイトスクリプティング、略称XSSとはフォームにスクリプトを書き込んでそれを実行させたりURLの末尾にスクリプトを挿入させてそのスクリプトを実行させる手だ。
「そういえばCSRFはCなのになんでXSSはXが頭文字なんでしょうか?」
「それはやっぱりCSS、スタイルシートと勘違いするからでしょうね。」
説明してなかったかもしれない、そうこいつ松田美優は科学部でのプログラミング担当。セキュリティーにこそ精通はしていないもののプログラミングやコンピューターに関する知識はある。
「CSRFもXSRF表記のときもあるよ。」
依頼された仕事も終わり、いつものだらけた空気がパソコン部の部室に立ちこめる。
どうするか、特にやることも無いのでwebTVをにアクセスする。
『このメールの内容株とは例の昨今業績を伸ばしているゲーム会社の株ですよね、これ一体どういうことなのですか?賄賂ではないのですか竹内大臣?』
『いやっ、ただそれは私の孫がそこのゲームが好きなもので...』
『しかしすぐにお売りになられていますよね。』
『どっどうしてそれが...』
「国会中継?」
「うん、今度は竹内大臣だってさ。」
「そういえば以前もありましたよね。そのとき質問していた方もこの人と同じですね。えっと確か名前が...」
「弘前議員、弘前邦夫議員だね。」
「ああそうです!この人の人気はうなぎ上りでしょうね。」
事実相手の党の支持率は右肩下がり。弘前議員の支持率は右肩上がりだ。次回選挙ではもう当選確実といわれているほどだ。
「今回は認めたんですね。前回なんかかなり証拠が出ても認めなかったのに。」
「まぁこの前は弘前議員のライバルだったからね。」
「あっ、そろそろ帰らない?」
松田が腕時計で時間を確認し発言する。
「そうだね。」
そういうと起動していた全てのコンピューターをシャットダウンさせる。CPUを積極的に冷却していたファンの音が休みを言い渡されて止まっていく。
そして皆が家に着いたころその日の夜、とある情報が地下社会を駆け巡った。住まう者は皆息を潜め互いを牽制しあう社会、ハッカーを含むアングラ社会。そこを駆け巡った一文の情報それは一通り地下社会を巡ると地上に出ることは無く消え去った。裏が取れなかった、必要の無い情報だった。それは同じく地下社会の住人であるアイスマンも例外では無かった。
「『国会議員弘前邦夫はハッカーを雇って違法に情報収集、情報改竄を行っている』かぁ。いたずらなのか告発なのか、こちら側で流れている情報だからいたずらはあまり無さそうだけどなぁ。」
そしてウイルス被害報告などの確認をする。大抵ユーザーにバレるようなウイルスは質の悪いウイルス単体による侵入か、バックドアが設置されて大量のマルウェアが侵入し質の悪いウイルスがその一つとして侵入してきた場合の二つがある。前者は気付けばそれを駆逐すれば済むが、後者では単体のウイルスを駆逐するだけでは無意味でありバックドアの撤去に他ウイルスの駆除の必要がある。前者か後者を見分けるのはかなり重要である。
「っあれ?」
ある電子掲示板に感染者から状況を詳しく聞き、バックドアの存在を確認しもしあればその撤去方法その他ウイルスの痕跡探し駆除方法を丁寧に説明しているアカウントがあった。ハンドルネーム『イザヤ』どこかで聞いたことがあるハンドルネームだけど……
そしてパソコンの電源を落としてベッドに横たわる。対ハッカー、アイスマンほとんどをハッカーの攻撃などを利用したりすることによってハッキングを可能にしている。そんなことでハッキング(犯罪)がチャラになるわけでは全くない、そんなことをしてもそれはハッカー(犯罪者)とやっていることは全く同じ……
「あぁ、それはきっとこれですよ。」
昨日のイザヤについてさくらに聞いてみた。するとさくらはこう答えとある英語の被害相談用掲示板を表示した。
「今話題の相談者ですよ日本語でも活動しているんで日本人と言われています。的確に丁寧に未発見のウイルスも痕跡を探し出すんで話題になっていますよ。」
さくらの後ろから覗くようにディスプレイを見る。
「英語圏の掲示板でも活動しているのか、Isaiahねぇ。アナライザーなのかな?」
「アナライザー…、私と同じ…。」
『BlackTale』世界中のハッカーが集まり情報交換をする場、そこ『BlackTale』ではハッカーは大きく四つに分けられる。一つはアナライザーつまり解析者、さくらはこれに分類される。プログラムの解析、脆弱性検査を行い脆弱性を発見すると売り飛ばす。二つ目はウイルスメーカーつまりウイルス作成者、ぼくがここに分類される。アナライザーから売り飛ばされた脆弱性情報などを元にコンピューターウイルスを作成する。三つ目はネットワーカー、ネットワーク越しに脆弱性を突くことで直接攻撃を行う。最近はウイルス攻撃がメインになりネットワーカーの人口は減少している。そして最後はアタッカーつまり攻撃者、自分ではウイルス開発も脆弱性検査も行わないがウイルスメーカーが作成したウイルスを拡散する。アタッカーは大抵開発者では無い場合が多く雇ってウイルスを供給してもらうのみなのでBlackTaleでは他三つから見下されている。当然アナライザーとウイルスメーカーを両立するという人間も珍しくないが主にその四つに分けられている。
イザヤの的確なウイルス診断は明らかにアナライザー、
「でも、イザヤさんはBlackTaleにはいませんね。」
「同じハンドルネームを使いまわしているとは限らないむしろこういう活動していたらあまり好まれないから別ネームを使うだろうなぁ。まぁそんなことよりも圧倒的にホワイトハッカーである可能性の方が高いだろうけどね。」
「ホワイトハッカーなんてなんか魔が差して私なんて続けられる気がしません。」
「ハッカーは一般的に自己顕示欲が強いって言われるけどぼくにも当てはまっちゃうな。」
「まぁ有能な敵さんがいてくれた方が戦う相手も楽しいですしね。是非イザヤさんには暗部に落ちないことを願っておきましょう。」
「敵さんねぇ。」
「私、プログラミングも少しは勉強しようかなって思います。」
「へぇ~、それならぼくもバイナリやアセンブリの勉強をしようかな。そうだプログラミング教えてもらうなら科学部のコンピューター班の方がいいだろから行ってみようか。」
「えっ荒木田先輩は教えてくれないんですか。」
「ぼくの場合、組みたいものを自分の知っている範囲で組んでエラーが出たり分からない所があれば調べるって学習方法だから全然教えることが無いんだ。それじゃぁ初心者には酷だろうし、エラーの説明程度しか出来ないからね。」
「じゃぁ松田先輩の所に行きましょう。」
そういってぼくの手を引っ張って教室を飛び出す。
するとすぐ前にパソコン部に遊びに来た松田がいる。まずさくらが驚きすぐに横に避ける。するとぼくも松田も急に止まることが出来ずに額をぶつける。さらにぼくは横に避けたさくらに手を引かれたままなのでバランスを崩して転ける。すると当然さくらもぼくに引かれて転ぶ。
「いてて、わっ大丈夫?さくらちゃん荒木田くん!」
最初に回復したのは松田だった。
「いたた、あぁ大丈夫だ…」
「私も大丈夫です。」
「誰かさんの石頭のおかげで少しズキズキするくらいだ。」
「悪かったわね石頭で。」
「すみません、すみません、わたしの所為で…」
「いいのよさくらちゃん。こういう時は『犯人は常に荒木田くん!』だから。」
その名探偵すこしは推理しろよ。主観入り過ぎだろう。
「ところで何をあんなに急いでいたの?」
「あっ、私が是非科学部のコンピューター班の皆様からプログラミングを学びたいと思いまして。」
「ーーという成り行きでパソコン部の皆さんがお越しになられたんだね。」
科学部パソコン班、部室は生物教室。
「うん、荒木田君は知っているだろうけどプログラミングといっても言語だけでもいろいろあるからね。なかには日本語でプログラミングできるものもある。例えばPythonこれは世界的に有名な言語の一つだ。これはすごいよまず可読性がとても高いから様々な場所ソフトウェア開発から研究施設まで利用してて…」
「ちょっと神崎、あんた自分がやってるからってPython贔屓にしすぎじゃない。ごめんね、え~っとさくらちゃんだったっけ。私のおすすめはJavaよこれは大きな特徴としてOSを限定せずにどんなOSを使ってもJavaは動くのだからパソコン用OSに限らずスマートフォン用アプリの開発にも使えるかなり将来性のある言語よ。」
「いやいや、将来性ならとうぜんC++を勉強すべきだぜこれはC言語から派生した言語なんだけど複雑な分とても奥が深くて…」
「初心者の方に教えられるのでしたら、やはりRubyでしょ。これは日本人が開発した言語なので日本語の解説本やサイトが豊富にありますし文字列処理は得意ですよ。」
「あっあのわ私はC#をおすすめします…けど…。」
『それは無い!』
「えっ、でもみなさんWindowsAPIを用いる場合やデスクトップアプリケーションの開発はやりやすいですよ…。」
「競技プログラミングなら必要ない!」
「ハッカー部だろ、それならC++だぜ。」
もう教えるというか、身内で喧嘩をしているよな。これは…
「なぁなぁ、松田。」
「なぁに?荒木田くん。」
「パソコン班ってこれだけか?」
「いいや、あと二人くらいいるわよ。あっ、一人来たわよ犬追くんね。」
ドアの開く音で喧嘩が止み急に静かになる。
「犬追…」
「なんでパソ部がここにいんだよ。」
犬追がぼくを睨む。やばいかなり怖い。
「あっほら犬追くん、この前相談した詐欺サイトの話あったでしょあのサイトを停止させてくれた人。」
松田の話を聞くと犬追はぼくの方へ歩んできた。そしてぼくのすぐ前に立つと、
ガッ
急にぼくの胸ぐらを掴み思いっきり睨むと同時に吐き捨てるかのように言葉を発した。
「てめぇ、サイト閉鎖のレスポンスが早すぎるだろ!正規の手続きを踏んでやってないな!」
決して口は割らない。
「何をしたんだ!」
ぼくは犬追から目を逸らす。
「所詮はハッカー部かっ。」
そう怒鳴るとぼくを離した。
「パソ部なんかさっさと出ていけ!」
ぼくとさくらは言われたように教室を出て部室に帰る。すると、
「ちょっとまって、ごめんね。」
松田が後ろから走って追ってきた。
「犬追くんはいつも学校に来る訳じゃないし学校に来ても部に来るのは稀だから明日とかは来てくれてもいいよ。犬追くん以外は来てくれてもいいと思っているしね。」
「ありがとう松田。」
「ありがとうございます先輩。」
「それと荒木田君。」
「何?」
「犬追くんは荒木田くん達のことをただのハッカーだと思っている。」
「うん実際ただのハッカーだけどね。」
「本当のことは伝えなくていいかな?」
「ああ、余計なことだ。」
「そう、じゃぁね。明日は来てくれて構わないよ。」
そう言うとさくらは生物教室へ戻って行った。
「怖かった。」
さくらが呟く。
「あぁ、ぼくもとても怖かったよ。」
「先輩があれでも認めなかったのはすごいと思います。」
「認めちゃうと犯罪者だからね。」
……
会話が全然続かない。困ったなぁ。
「そういえばさくらは何でアナライザーになったの?」
「えっ、先輩それここで聞いちゃいますか?この理由は私の旦那にしか話さないと心にちかったんですけどね。」
結婚してないから旦那なんていないだろ。というかキャラ変わった?まぁ普通に考えてやんわりと断られているんだろうな、話すことを。そんなことまであまり詮索するもんじゃあないしな。話題を変えるか。
「そんなに先輩がお気になさるのでしたら。実は…」
「言うのかよっ。」
「へへへ、そんな深い理由なんてない他愛もない理由ですからどうぞ気になさらないでください。」
「イザヤさんはどうでしょうか…。」
「えっ?」
これは驚いたという訳ではない。ただ急に『イザヤ』の名が出てきて言いたいことが分らなかったのだ。
「もしイザヤさんが私たちの、ハッカーを利用するハッカーの存在を知ったらそれに対してどう思うんでしょうか。やはり他のハッカーと同等にしか思わないのでしょうか。」
「そりゃぁ、ぼくらなんて凶悪犯のみを殺しているデスノートのキラみたいなもんだろうな。誰を踏み台にしていようと犯罪は犯罪って思うんじゃないかな。イザヤさんなら。犯罪の誘惑に打ち勝ってホワイトハッカーを続けていられているんだから。」
部室へはすぐにたどり着いた。特に何かをやろうとするつもりがあるわけではなく何かの目的があるわけでもないがとりあえずパソコンの電源を入れる。ぼくの悪い癖だ。とりあえず何をしようか考えてとりあえず検索エンジンに入力する。
―ハッカー なり方
世界は広いようですぐにヒットするサイトは現れた。検索はおよそ151,000件ものウェブページを世界中から探し出してくれたようだがとりあえずトップのサイトへ訪問する。特に重要な情報がこんな簡単に見つかる訳がない。メモ帳ウイルスとか言葉の並ぶページを半分以上目を通さずに閉じる。さくらは何かを考えているようで特に何かをしている訳ではなさそうだった。
「それじゃぁ今日はもう帰ろっか。」
さくらすぐはっとして
「はい、そうですね。失礼しました。」
そういうとさくらはすぐに支度をし一礼をして教室を後にした。
―にしてもさくらはどうしてプログラミングが出来ないのにアナライズに興味を持ってそれをここまで極めたんだろうか。まぁある程度のC言語は書けるらしいけど、デスクトップアプリケーション開発系の言語を勉強している訳ではないし競技プログラミングの勉強をしている訳でもない。
取り敢えずぼくも荷物を詰めて教室を後にする。
とある小さな部屋の一角、
Name:アンナ
イザヤさんありがとうございます!おかげさまでパソコンを買い換えなくてよくなりました。感謝、感謝です!
Name:イザヤ
もしまたお困りのことがありましたらご相談ください。出来る限りのことはしますので。
Name:アンナ
ありがとうございます!
「―はぁ。」
三日に一つか二つ送られてくるコンピューターの不具合についての質問。たまにはコンピューター本体の不具合ではないのかと思われる質問が送られることもあるが、多くはマルウェアつまり有害ソフトに関する質問だ。ハッキング、コンピューターウイルス、トロイetc・・・ログを送ってもらってそれから不審な点があれば相談者に聞く。さながら推理小説を読んでいる気分なので俺はボランティアでこれをやっていても特に対価が欲しくなるようなことはない。
―またパソコンをしているの?健康には気を付けてね。―
祖母からのメール、
―分かってる今降りる―
適当に返信をしてコンピューターの電源を落とす。ハンドルネームであるイザヤにそれほど深い意味は無い。いつの日か読んだ小説に出てきた名前だ初めは神話の話は知らなかった。だから海外掲示板で活動を始めた時Prophet Isaiahと呼ばれた時にはとてもうれしかった・・・でも俺がこの活動を始めた動機はそんなことではない・・・