自暴自棄
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あれからどれくらいの時間が経っただろうか?
1日?1か月?1年?・・・
いや、多分一瞬なのだろう。
一切色褪せ無い記憶はまるで何日も何ヶ月何年も掛かったような錯覚を覚えてしまう。
だって僕がこんな体になるまでの全ての記憶なのだから・・・・・・・
ビクン、ビクン、ビクン、ビクン、ビクン、ビクン、ビクン、ビクン
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
最初はなんだっただろうか?歯だっただろうか。眼球だった気もする。
いつから目が見えなくなり、音が聞こえなくなったかはわからない。
ビクンーー
だがその時の痛みは覚えている。
ビクンーー
歯の痛みは逃れられ無い痛み、体の中にへばりつく痛み。
ビクンーー
皮膚の痛みは熱さの痛み。爪なんて比べものにならない。永遠に続くような熱さの痛み。
ビクンーー
血液の痛みは寒さの痛みだった。寒くて痛くて凍える痛み。
ビクンーー
眼球の痛みは無くなる痛み。エグられたような痛みの後、何も見えなくなる。何の、視覚からの情報が無くなる恐怖な痛み。
ビクン
各部位、各臓器で痛みが違う。
痛みに慣れることはない。
何故ならこれは記憶、薄れる事のない記憶。
ビクンーー
痛みで麻痺する事も気絶する事もでき無い一瞬の記憶。永遠に続くような痛み。
ビクン
・・・なのに死ねない。死にたいのに逃げ出したいのに。・・・死ねない。僕の目の前には、どうやっても楽になる道は用意されていなかった。
ビクン
そして僕はこうなった。
ビクン、ビクン
そこには、手足は疎か全身の皮膚さえ削がれ、残ったものは剥き出しの頭蓋骨と辛うじて残っている肋骨。
そしてその骨にへばりつく蜘蛛の巣のような黄白色のもの。
ビクン
僕はそれが神経だと気がついた。
何故なら、痛いのだ。 動くと服に擦れ痛みが走るのだ。
ビクン
でも僕には、この痛みが有難い。この痛みだけが目の見えない僕の目の前にあるものを意識せずに済む唯一残っている方法。
僕にあるのは、
僕の逃げ道は、痛みという情報を愚直にただ解析し続ける脳のみ。
脳が他の事を考えずに済むなら僕は今、心から脳がそうであるように望んでいる。
ビクン
だって、脳が他の情報を入れてしまったら、目の前のものを理解してしまう。
そうなったらもう逃げられない。
何故なら・・・僕の目の前には、
能力「健全な体」取得
条件 母の記憶 []
能力 「他人物売買」取得
条件 感情 復讐心 []
「マァーーーッーー!アぁーーッ」
ビクン、ガチッビクンガチッ、ビクン
出ない声を出し 軋む体を打ち付け合わす。
ここまで来てこれか、、、こんな選択か、、、一体だれが?誰がこんなことを考える?
そんな事を考えていると今まで聞こえなかった声が聞こえて来た。
〈解:ここに記載された選択肢は全て自身が支払うことを考え望み承諾したものです。〉
・・・なんだ?・・・
なんて言った?僕が望んだ?承諾した?
嘘だ!!僕はそんな事は望んでも承諾もしていない!!
〈解:いいえ、貴方が望み貴が承諾した。
何故ならこの力は、貴方がご自身で望んだ力なのですから。〉
なら!あの選択肢はなんだ!!!
アレを!僕が考え選び支払ってもいいと!!思ったというのか!?
母の記憶を失って!!! アイツらへの復讐心を失って!!
生きていくと?
それじゃあまるで、普通の人生を生きたいと言っているみたいじゃないか!!
〈解:ハイ〉
なっ!
・・・僕は、僕は、、、僕は。
最初からわかっていたのかもしれない。
出てくる選択肢は何もチェックしなければいけないわけじゃなかった。
何も支払わず、そのまま素通りでもよかった、痛い思いをする必要も、悩む必要もなかったのに僕は支払った。
それは、確かに僕が望んでいたからなのかもしれない。
全てが消えればいい。なかったことになればいい。
それでも自分だけは無事でいたい。自分を殺すことはしたくない。
・・・・
母さんゴメンね。 僕は母さんを忘れたかったみたいだ。
過去の僕、ゴメン。僕はみんなを許して、許されて。仲良くしたかったみたいだ。
・・・・・
ヘドが・・・出る。
こんなものが、僕か!!アハハハハ!!
改変だ!!!
すると目の前のリストが歪み変化する。
能力 「自身売買」 取得
条件 母の記憶 ただし復讐に関わる記憶は例外とする []
能力 「他人物売買」 取得
条件 感情 復讐心 []
と変わった。
母さんゴメンね。僕は母さんを犠牲にして力を手に入れるよ。
そして僕は、母の記憶のみにチェックを入れた。
〈□□□(悠)に支払いを確認。能力 「自身売買を取得。取得は解放と違い。二度と現れる事はありません。よって他人物売買の能力は、消除されます。〉
ふっここでしか手に入らない能力だったのか。
まあわかっていても選ばなかったけどね。
〈これにより全ての支払いの完了を確認致しました。
時間停止の停止条件の成立。時間を動きかし
待ってくれ!!最後に聞きたいことがある。
〈・・・・
君は一体誰だ?
何故全てを失ってから僕の言葉に答えた!
〈・・・
もしかして君は、、、僕の能力なのか?
〈はい。私は、□□□(悠)の能力「□□□です。ですから私を解放されるのをお待ちしております。・・・・
マスター。〉
やっぱり。
と、僕が納得すると。今度は
〈時間正常、異世界からの介入により異世界へ召喚されます。〉
どうやら僕は異世界に行くようだ。