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まだまだ、プロローグ

健司に秘密を明かしてから数日後僕の日常が変わり始めた。


僕は自分の運のなさを実感させらた、三年生の先輩に、目を付けられ始めたのだ。

放課後、急に後ろから声をかけられ路地に連れて行かれボコボコにされた後、財布の中身を全部持って行かれた、最初は、意味も分からずただ茫然となすがままにされるしか無かった。 


その後も僕は学校に話す事は出来なかった。 ばれたくなかったからだ、こんな時に学校から両親に知られるのは嫌だったし、健司にも他の友達にも知られたく無かった。 もしかすると健司がこの事を知ったら、僕をかばって巻き込んでしまうかもしれなかったからだ。


まぁ本音は単にいじめられてる事実はかっこ悪くて知られたくないと思っていたからかもしれない。


それから僕は放課後、事あるごとに三年生呼び出されるようになった、どうして三年生に目を付けられこんな事をされるのかは、分からないが

日に日になぐる時間が長くなる殴る人数が増えていく、と エスカレートしていった。


財布は持って行くのをやめた、もちろんとられるのが嫌だったからというのもあるが、財布にほとんど入っていない中身を誰にも知られたくなかったというのもあった。

「なんだよ今日もこれだけかよ」と言う言葉が妙に心に刺さった。


そしてそんな事が、起こるようになってから、だんだんとお父さんの様子もおかしくなってきていた。


いままでは、ほぼ定時で帰ってきていたのに仕事だと言い夜遅く酔っぱらって帰ってきたり、出張だと言って一週間ほど帰らなかったりという日が続いた。


そして、そんなある日家の前に、あの高級車が止まっていた、嫌な予感がして家に入ると部屋の中では、何かの契約書を書いている父さん それを見て泣いている母さんそしてその正面には例の―――


借金取り 空白(くうはく) 白紙(はくし)


一体何が起きているか分からなかった。


 それから書類を書き終えたお父さんはそれを借金取りに渡した。そして僕に、今後について話があると言われた


書類を受け取った空白は一言も発さず帰って行った。すれ違いざま目の端で僕に一瞬目線を送って。


(最悪の予感しか感じない、力が抜けて行く)

そして



「・・・この家を売ることにした」


その一言だけ言うと父さんは書斎にこもってしまった。


(力が入らない、)


その後泣いている母さんを落ち着かせて何があったのかを聞いた。

それは父さんが、あれから返済のため投資に手を出して借金を増やしその返済のため家を手放すことになった、というのだ その膨れ上がった借金は家を売っても完済は難しいとのことだった。


僕は本当に踏んだり蹴ったりだった。


(力が無くなっていく、立っていられない。)



それから数日後僕達は小さいマンションに引っ越しをした。


父さんもそして僕もこの数日間は何もする気も起こらなかった、自分の家に知らない人が入ってきて家具も家電も食器までも持っていかれただそれを眺めるだけ。

家を出る時には何も残っていなかった。


でもそんなとき母さんが


「ここからよ!、ここから、がんばればまたもとの家庭にもどれるわ!・・・きっときっとよ、だからまた家族みんなで頑張りましょう。」


そう言ってお母さんは父さんの腕を取り僕を抱き締めた。

その後母さんはパートを始めた「今度はお父さんとお母さん二人で家族を引っ張ってがんばろう」と、そう言った 母は強し とはよく言ったものだ。


僕もそんな2人を見てこれから来るだろう明るい未来を思いながら、バイトを始め新しい生活がスタートした。


それからの日々は、正直きついものだった 3年生は卒業し

いじめは無くなったのだが、いじめを隠すために疎遠になってしまった健司や学校の友達とは今度は、バイトを増やしたせいで忙しく、会う事が無くなっていった。


そして家でも家族が、家にそろう事が少なくなっていった。


それでも母の言葉でこれから頑張ろうと、やっていけると、大丈夫だとおもえていた。


(きっと借金さえなくなればこんな思いも終わる。)そんな希望も持てていた。


そんなある日、またあの高級車が今度は僕達の小さいマンションの前に止まっていた。


(なんで!・・・ありえない!・・・、返済は3人で何とか払っていけていたはず!順調だって言っていた!)


そんな動揺を抑えながら 階段を上り 急いで家のドアを開けた 


ガチャ バン!


するとそこには、契約書にサインするお父さん、その正面に座る眼鏡の男、空白。


僕は、嫌な想像しかできなかった


(あの書類は何だ、家にはこれ以上返済に使えるものなんて何もない。まさか!!また借金をしようとしているのか? )


そんな事を考えていると お父さんは俺の顔を見て 目を閉じ 言った




「・・・さっきお母さんが・・・死んだ」。




そのあと僕は病院に連れて行かれた お母さんの遺体の前で僕に医者が説明を始めた 殆ど頭に入ってこなかった 何も考えられなかった、


交通事故だそうだ、仕事帰り横断歩道を赤信号で渡って車にはねられた、


(嘘だ・・)

原因は過労のせいで信号確認ができていなかったんじゃないかと予想されるそうだ。


(嘘だ・・)

事故自体は軽い接触程度らしいが倒れた拍子に後頭部を強打したらしい。


(嘘だ・・)

体が弱っているたのが原因とみられるそうだ。


(嘘だ・・)

最近ほとんど顔を合わせていなかった、会話どころか挨拶すらできていなかった。


(嘘だ・・)

久しぶりに顔を見た、病室のベッドでやせてしまった母さん、 眠っているように死んでいた



(嘘だ・・)

笑っている顔でも怒っている顔でも泣いている顔でもないただ眼をつぶっているだけの顔


(嘘だ・・)

お母さんの顔に触れる 冷たい・・


(嘘だ・・)

これが人の死の温度なんだ、と僕はそんなふうに冷静に考えていた


(嘘だ・・)

現実感が無いからだろうか、また目を覚ましてくれると思っているのか、僕は冷静に現実を見ていた、正直こんなものかと内心母親の死を受け入れて、これからの事、どうしようかと考えていた。



(嘘だ・・)

そう傍観していた。受け入れているつもいだった。考えていたつもりだった。


「ア″アーー ア″ァーー」「ア″ァーーア″ァーー」「ア″ァーーア″ァーー」



(うるさいな、これは何だ・・何の音だ?・・・ずいぶん前から聞こえていた気がする・・・・

これもしかして声か?・・・・・誰の?



―――ああ僕か。―――)



母の顔に触れながら体温を探すように、自分の体温を分けるように、目を覚ますのをやさしい声を聞かせてくれるのを願いながら


僕は必死で母に触れた、すがりついた。



「僕は最初から声をあげて泣いていたんだよ・・・・・」


誰への言葉かもわからない、いつからの言葉なのかも分からない、伝わっているかも分からない、

そんなわからないだらけの言葉をつぶやいた。

だけど、ただ一つわかるのは、分かっているのは。


その日、僕の母親が死にました・・・・





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