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噂の歯医者さん。

 このまえ、歯医者に行った時の話です。

 カトラスは甘いものが好きなので、よく虫歯になるのですよ。ほんでもって、先日も寝ていたら「ズキン」とした奥歯の痛みで夜中に目が覚めました(汗)

 おそらく虫歯になったのは、ストレス解消のために、ひたすら噛んでたガムが原因だと思い当たるふしがあるので自業自得です。

 とりあえず、その夜はバファリン飲んでなんとか朝までしのいで会社に行ったのです。でも、会社につくなり、鎮痛剤の効力が切れたのか歯の痛みが再発です(涙)。 ズキン、ズキンとした痛みは、とてもじゃないですけど仕事どころじゃない状態ですわ。仕方ないので早退して歯医者に行くことにしました(自分痛みに弱くへたれなので我慢できません)。家に帰るなりバファリンをがぶ飲みしたったのですけど、もはや鎮痛剤がきかないくらいの激痛がはしっています(大汗)

 しかも、なんでかわからんけど、パートにいってるはずの嫁が家(自営業はええのー)にいて「あんた、仕事さぼったんか?」としゃべりたくない状況なのに追いこみかけてきます(泣)

「歯が痛いから帰ってきたんじゃ」と昨日の晩からの経緯を言うと、「ふーん。ほんで、どこの歯医者いくん?」と聞いてきました。そういや歯の痛みで頭が回らなかったのですけど、どこの歯科医に行くか考えていなかったのです。というのもカトラスの近所は非常に歯科医院が乱立している地域でしてパッと頭に浮かぶところだけでも3軒あります。嫁さんに「おくむら歯科」にするわと言うと、「おくむらはあんまり評判よくないで、なんで藤田か武田にしないの」と自分の行こうとしてる歯医者を否定してきますわ(汗)

「おくむらやったら、なんで、あかんねん。昔からある老舗の歯医者やろ」と聞くと、「あそこ、入れ歯専門で年寄りしか行かないって話やでー。患者もほとんどいないし、最近小学校の歯科認定も外されたって聞くよ」

 なるほど、近所でのおくむら歯科の噂はとどのつまりやぶ医者だとわかったのですが、嫁さんの勧める藤田と山本は過去に歯の治療中に行くのが邪魔くさくなり、予約ぶっちして逃げた覚えがあるので、また顔を出すのが自分としてはバツが悪いので行きたくないのであります。しかも、両医院とも繁盛していて予約していないと何時間待たされるか分からないです。今の激痛からしたら一刻も早く見てほしい状態なのです(汗)

「やっぱ、おくむらに行くわ。あそこやったらすぐ見てもらえそうやから」

 嫁さんにそう言うと「別にあんたの歯やからかまへんけど、おくむらはやめといたほうがいいでー」と、このごにおよんで不安がるような事を言いながら玄関先でお見送りしてくれました。

「ほんなもん、やぶ医者かどうかなんか、行ってみなわからんわ」と道中思いながら、おくむらに向かったのです。

 ほどなくして歯医者に着き、待合室で問診票を書き終わると、すぐに診察室に通されました。患者が自分しかいなかった不安はあるもののすぐに診てもらえるのはありがたいことです(涙)

 歯科医師は歳は60代ぐらいの細身で白髪頭の優しそうなおじいさん先生です。問診票を見ながら「右下の奥歯が痛いのだね」と聞くと、可動式の椅子を倒して「あーんして」とカトラスの口の中を診察開始です。先生は細長い鉗子を持つと「人の神経って難しいものでね、右下の奥歯が痛いと思っていても、実際は違うことが多いのだよ」と言うと、その細長い鉗子で右側の歯を一本ずつ叩きながら「ここ痛くないか?」と点検し始めました。そして何本か叩くと激痛がはしるとこがあったので「そこ痛いです」と先生に言うと「やっぱり奥歯と違うところだわ」と虫歯の箇所をピンポイントで発見されたのです。ふつうの歯医者なら金儲けのためか、軽く診察したあとに「レントゲン撮ります」と言って何枚も様々な角度で写真撮ってから虫歯の箇所を特定するのですが、このおじいさん先生は鉗子一本のおのれの技量で虫歯を見つけたのですよ。こ、これはやぶ医者どころか、名医じゃないのかと……。カトラスは実感したのであります。そして「すぐに痛いの直してあげるよ」と言うと、グライダーで虫歯の箇所を削ってくれだしたのです。「ウィーン、ウィーン」と今まで行ってた歯医者なら嫌な歯を削る音と鈍痛が伴うのですが、この先生は削るのが巧いのか、鈍痛のかけらも感じず、どちらかと言うと心地良い感じがしました。しかも、歯の治療をしてる間に「歯痛ってのは人間が一番我慢できない痛さの一つなんだよ。戦争が終わったことを知らないでジャングルで潜伏してた横井庄一さんって元日本兵がいたのだけどね、潜伏中に一番つらかったことは,飢えでも寂しさでもなく、歯痛だったのだよ」と歯に関するうんちくまで披露してくださる腕の持ち主ですわ。これは紛れもない名医と言っていいのではないか。

 そして、診察から1時間以上たって「終わったよ、まだ痛みは出てないけど、もう一本の歯も虫歯になっていたので削っておいたよ」と先生が言う頃には、すっかり歯の痛みは治っていました。「つぎ、いつきましょう」と先生に聞くと、「痛みがないなら、治療は終わったので今日で終わりです」と涼しい顔で言いますわ。ちょこっと5分ぐらい治療しては「消毒だけしときました。また来週きてください」と永久に治療が終わらないのに、巷では名医と呼ばれてる繁盛歯科医院とは大違いです。こういう、おくむらみたいな歯科が本当にいい医者なんだと思いめぐらせながら帰宅しました。

 帰ってから、おくむら歯科の風評を悪くしていた嫁さんにも「あれこそ名医やったわ」と噂に左右されてはいけないと諭してやりましたよ。それを聞いて嫁さんは「ふーん、そうなん良かったやん」とちょっぴり悔しそうな感じだったので勝ったと思ってカトラスはご機嫌でしたわ。

 そして、それから三日後、すっかり歯の調子がよくなったカトラスはとうもろこしをかじっていたのです。もろこしの芯の部分をかじった時「ゴリ」と嫌な音がしました。そして口の中に硬い異物を感じたのです。すぐにその異物を口から吐き出して手に出すと、白いものが乗ってます。「なんじゃ、こりゃ?」と思って異物をよく見ると、それは自分の前歯の一部がかけたものでした。その瞬間、この前のおくむら医院の治療結果だと分かったのは後の祭りであります。結局、あのじじい削り過ぎたんちゃうの? と思っても嫁さんのネタになるだけなので、黙って藤田歯科に行くことにしました。しかし、おくむらのじじいはもう一本の歯を削っていたのが気になるところではあります(涙) 以上、火のないところに煙はたちませんね。

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