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ジョーカーとともに、俺は川辺の背後に回った。
茂みに隠れている川辺を、後ろから観察する。
あれ? 川辺のやつ、現世より、一回り体が大きくなっていないか?
現世でもピザだったけど、こっちだと、筋肉ピザって感じの巨漢のようだ。
上半身は半裸で、両肩に、トゲ付きの肩パッド?
腕や下半身に装備している鎧も、肩のと同じ素材らしい。頑丈そうで、見るからに強そうだ。
自分自身に、相当自信があるのだろうな。
川辺はしゃがんで、茂みの向こうを眺めていた。その先にいる崎本。
池で水浴びをしている、崎本は、恥ずかしげもなく、裸をさらしていた。
誰かに見られているとは、思っていないのか?
体のどこを隠そうともせず、
歩くときに、太ももから股の付け根あたりへ、水が波打つのを、楽しんでいる。
小さな体に、キュッと上がったお尻、そして薄い胸元。
高校生のはずなのに、まるで子どものような幼い体つきだ。
ときおり、手で水を弾いたり、
前に屈んだりして、池の中の何かを探している様子。
崎本が前に屈むとき、後ろから見てると、お尻がこっちに突き出されたものだから、
ジョーカーと一緒にそれを見てるのは、少し気まずい。
見えてはいけない部分が、もろ見えなのだが、
ジョーカーは真っ直ぐに目をそらさない。
見慣れてるのかな?
なんて馬鹿なことを考えてしまった。
「ターゲットは獲物に夢中になっているな」
とジョーカー。
獲物に夢中に……?
と思って、あ、そうかと、気がついた。
動物を捕まえるのは、その動物が捕食に夢中になっている時が、一番良いんだ。何かの漫画で読んだ気がする。
ゴリラは今、崎本に意識が向いているから、
仕掛けるには今がちょうど良い。
この機を逃す手はない。
よし、行くか……。
ジョーカーに頷いて、俺は川辺のすぐ後ろについた。
イメージ能力を働かせ、
ガラス製の金魚鉢を右手に具現化させた。
上手くできた。
程よく頑丈で、
これで強く殴っても、鉢の方が先に割れるから、これで死ぬこともない。
今死んでもらっては困る。楽に殺すつもりなんて、ないのだからな。
そろそろと川辺に近づき、呼吸を整えた。
両手で金魚鉢を抱え、頭上に掲げる。そして、振り落とした!
パリンッという強い音ともに、
金魚鉢は川辺の後頭部にクリーンヒット。
川辺はぶっ倒れた。
慌ててすぐに、俺も身を潜める。
茂みから、池の方を見やると、崎本はキョロキョロとしていた。
音には気がついたらしいな。
崎本は、あとだ。居場所は記憶させていないが、今日は土曜だから、時間はたっぷりとある。
あとで遊んでやろう。
しかし、
……川辺を気絶させたはいいものの、
ここからどうするか。
大月を殺すときは、
ジョーカーが大月を捕まえて、地下牢にぶちこんでたんだっけ。
あのときジョーカーは散々、大月のことをいたぶったらしい。
あれは便利だった。
逃げられる心配がないし、叫んでも外に声が漏れない。
あの場所に行きたいが、ここからかなり距離がある。
いや……あれって、
そういえば、もともとこの世界にあるものだったんだろうか。
そうだ。
あんな場所に地下牢があるのは、いかにも不自然。
影世は不自然の塊だから、
そんなこと気にしても仕方がないのだが、
もしかしたらあの地下牢は、ジョーカーがイメージして作ったのかもしれない。
それなら、俺にも作れるはずだ。
川辺の巨体を引こずって、
俺は小川の下流へと進んだ。
ジョーカーは何も言わずについてくる。
本当にもう、手伝う気はないらしい。
森は木が多くて邪魔だから、
多少目立つが小川のすぐ上に作るしかない。
意識を集中させて、
目の前に、牢屋をイメージした。大月を殺した、あのときの牢屋。
あれと同じものなら、たぶん作れるはず。
自分の手の先を中心として、
ゆっくり、ズズズと、炭色の石が形を表してきた。
これだけ大きなものを作るのは、初めてだ。
頭が疲れてくるのを感じ、目をつぶってそれを、こらえた。
大きく息をはく。
時間、結構かかったな。
初めてのものは疲れやすいし、時間もかかる。
だが、よく出来ている。
小さいが立派な牢屋を作ることができた。
そのとき、背後からジョーカーの声が聞こえた。
「凄いじゃないか。
丈夫そうで、立派な牢屋だ。この牢屋でやるのか?」
俺はジョーカーに頷く。
「そのつもりだよ」
「こんな牢屋に入れるなんて、川辺は幸せものだな……」
いかにもグロテスクで臭そうな牢屋に片手を触れて、
ジョーカーは言った。




