00005CJBTK「飛び降り(二)」
俺は慌てて首を横に振った。
今俺、……何を考えてた?
まさか、死のうなんて考えてたのか?
馬鹿馬鹿しい!
何で俺が死なないといけないんだ。
死ぬのは、あいつらカスどもの方だ。
あんな奴らがいるからいけない。
世界がクソなのも、あんな連中がいるからだ。
俺みたいに善良な人間が増えればもっと良い世界になる。
そうだ。
死ぬのは、あいつらだ。
死んだ方がマシってやつだ。
きっと、誰かが手を汚さないといけないんだ。
皆わかってるけど、怖がって誰もやれない。
誰かがやらないといけないとわかっていて、手を下せない。
だから誰かが……。
そうだ。俺が、……俺がこの手で……殺す。
自分の手を見て、再び頭を横に振った。
今日は何だかおかしい。
変なことばかり考えてしまう。
いつもの俺じゃないみたいだ。
じっとしてると、死にたくなる。
かと言って、人を殺したくてたまらない。
復讐がしたい……。
うぜえ死ねとは毎日思ってた。
けど、ここまで本気で殺したいのは初めてだ。
今日のあの事件があったからか?
あぁ、でも……何だか、この屋上から飛び降りたら、ジョーカーになれる気がするんだ。
俺は黒い本を改めて見つめた。
そしてページをめくって、
自殺の方法について再確認する。
高さは十分。
難しいのは、落ちるときに取るポーズだ。
簡単じゃない。
文章で事細かに書いてる。
それを体で再現するのはかなり難しい。
俺でもジョーカーになれるのかな。
いや、なりたい。
俺はジョーカーになりたい。
そうだ、……飛び降りてみよう。
復讐はきっと楽しい。
楽しい楽しい復讐。
早く殺したくてたまらない。
クラスメイトは全員殺す。
津秋と、馬場だけは、殺さないでやる。
あとは飛び降りるだけだ。
俺は黒い本を置くと、屋上の端に立った。
急に心細くなってくる。
何で俺、こんなところに立っているんだ。
黒い本を手放した途端、なぜだか急に怖くなってきていた。
地面がずっと遠くに感じられて、
目眩もして、頭がふらふらしてくる。
今の今まで、死ぬ気満々だった気がするのに。
でも確かに、こんなクソみたいな世界、居ても仕方ないんだ、
と思い直す。
一歩踏み出すだけで死ねる。
小さな勇気。ボタンを一つ、押すだけだ。
運が良ければ異世界に飛べる。
運が悪ければ死ぬ。それだけだ。
それなら、それに賭けてみるのも悪くないかもしれないな。
こんな世界……。
ついに俺は屋上から飛び降りた。
ジョーカーの日記の自殺法そのままで。
瞬間的に心臓が縮まる感じがする。
思わず目をつぶった。
あぁ、これは死ぬな、と思った。
勢いよく地面に向かって降下し、
そして俺は地面を突き破って黒い闇の中に入っていった。
ぬめりのある液体の中を通る。
ぬぷぷっ……と何かの中に入っていく感じがあった。




