00012JDK「怒り(三)」
気づくと俺は、
ジョーカーの言葉を何の抵抗もなく受け入れていた。
「お前は何も悪くない。悪いのは全部、大月だ」
「いいか、大月さえいなければ、津秋はお前の物だった」
「大月を殺すしかない」
「殺せば津秋はお前の物になる。もちろん現世でもな」
「殺せ。他に方法はない」
俺は、ジョーカーに頷く。
「大月を殺したい。ジョーカー、やり方を教えてくれ」
「もちろんだ」
と、ジョーカー。
ジョーカーは嬉しそうだった。
ジョーカーはベテランだ。
ジョーカーに聞けば間違いない。
大月を出来るだけ苦しめて殺す。
復讐だ。
あんなカス、死んで当然。
俺には殺す権利がある。
殺す資格がある。
そうだ。
害虫は駆除しないといけない。
俺はジョーカーの言葉を思いだす。
……犯罪者め。
この俺が処刑してやる。
それから土曜と日曜を使って、
俺はジョーカーに能力の使い方を学んだ。
もちろん、最初に来たときにも教えてもらってる。
遊びとして。
遊び道具を作ってジョーカーと遊んでいた。
俺が何かを作るたびにジョーカーは褒めてくれた。
「一週間で純一に先を越された」とか言って。
嬉しそうに。
毎日、ジョーカーが喜ぶ物を考えてた。
少しずつ複雑なものに挑戦して。
デュースが尻尾を振りそうなものも。
デュースは動くものが好きだった。
小さなデュースの人形を作ると、
首をかしげてたのがおかしかった。
復讐に燃えた俺は、
既にかなり複雑なものも作れるようになっていた。
ジョーカーは俺に属性を付与するやり方を教えようとしてた。
触ると痺れるとか、熱いとか、そういうのだ。
しかしそれは難しくて、後回しにする。
必要な刃物は簡単に作れる。
構造が単純だから一発。
だが強度は今ひとつな気もする。
「実物を見ないとダメだ」
と、俺はジョーカーに言った。
ジョーカーは興味深そうに俺の話を聞く。
「出来るだけ間近で見る。触る。嗅ぐ。可能なら製造工程も見学しておきたい」
「なるほどな」とジョーカーは頷いていた。
やはりジョーカーはイメージが苦手なんだろう。
闇雲に作ろうとするからダメなんだ。
初めは本物を手本にすれば良い。
それに少しずつ手を加える。
オリジナルを作るのはそれからだ。
俺の説明を聞き終わると、
「純一、決行は次の日曜にしよう。できるな?」
と、ジョーカー。
「もちろんだ」
と、俺。
現世に帰ってからも、
俺の頭は影世のことでいっぱいだった。
ジョーカーの殺しは、いたぶりが基本だ。
自分の手のひらの上で動かして、
逃げ道を一つ一つ潰していく。
わざと逃し、抵抗させて、
自分の無力感を自覚させる。
最後には残念そうな顔をしながら、
罪状を読み上げて殺す。
「正義の鉄槌だ」とか言って。
きっと、俺にもそういうのを期待してる。
簡単に殺したりしたら、
「心底ガッカリした」とか嫌味を言ってくるに決まってる。
それは嫌だ。




