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早くプール行きたいけど、準備はちゃんとしましょう

夏が終わってしまった・・・けど気にしない!

「もうすぐでスピリタルベアに到着します」


そのアナウンスを聞き、外を見ると大きなホテルが見えてきた。

今まで泊ったことの無いホテルに皆が注目している中、つんつんと袖を引っ張られる。


「ねえママ」

「どうしたの?」

「なんでママはいつもとちがうの?」


いつもと?ああ変化のことか。


「いつもの姿だとね、周りの人に迷惑がかかるから」

「なんでぇ?」

「ママがちょ~っと有名人だからかな」

「そうなんだ~。でも、なんでおとこのひとなの?」

「これは私の趣味よ。この姿嫌い?」

「うんん!ママはママだもん!だいすき!」

「ありがとう、ママもタチバナのこと大好きよ」


むしろ愛していると言って頬を挟んでむぎゅっとしてあげる。

うきゃ~と声をあげながら喜ぶタチバナ。

しかし、この姿を一番気に入っているので嫌いって言われたらどうしようかと思った。


ん?なんで前世は女なのに男かって?

いやさっきタチバナに言った通りただの趣味ですが。

前世から思ってたのよ、来世では男になりたいって。まあ腐ってたのもあるんだけど(笑)。


そもそもスライムは無性だから、どんな性別にでもなれる。


それこそ無性のままでも、両性具有でも可能である。

で、私は普段人に変化する時は好みの男性の姿に変化している。

どんな姿か?…………そんな変な姿はしていないわよ?

目は糸目と言われる感じの細目で輪郭は丸というよりはほんのちょっとシャープなでもイケメンではない、俗に言うモブ顔だ。

それでいてよくよく見るとちょっと格好いい?と思われる感じの顔と言ったらわかるだろうか。

といってもそれは前世での基準で、この世界の基準では本当に平凡中の平凡な顔だから正体がかなりばれ難くてすごくいいんだよ。


男の姿なら母親呼びは変?前世ならそうだけど、此処では違う。

前にも言ったけど、この世界にはそこまで多くはいないが転生者や転移者がいるし、過去にもいた。それこそ今から何百年も前からね。

その中に私のように腐った人やTSした人もいてね、そうした人達の活動により今じゃ同性愛は別に珍しいことではなくなった。

男性でも母と呼ばれる者もいるし、女性でも父と呼ばれる者もいる。(同性夫婦どちらも父または母と呼ばれていることもある)

だからこそこの姿の時にママと呼ばれても不自然じゃないんだ。


口調も直す必要性を感じなかったから、ほとんど前世のまま。

オカマやオナベの人も多くはなくともいるので、奇異の目で見られる事は無い。

こういった所は本当前世よりも良いと思うんだよね。


そんな事を考えていると、車が止まった。

どうやらホテルに着いたようだ。

ドアを開けてもらい降りると、子供達が大きな口を開けて上を見上げたり辺りをきょろきょろしている。

かくいう私も前世も含めて、そうそう泊ったことの無い高級ホテルの玄関の雰囲気に少々腰が引けていた。

あれぇ!?いやいや、何これ。えっ前世のテレビで見た高級ホテルと殆ど遜色ないんだけど!


どうやら知らぬ間にホテルは進化してしまっていたようだ。

ガイドブックで一応写真とかは見てるけど、それでもここまでキラキラしてたかなぁ!?


案内係に誘導されてホテルへと足を踏み入れると………そこは別世界でした。

吹き抜けのエントランスに、鏡のように磨かれた床、そこかしこに花が飾りつけられ、壁には絵画以外にも壁自体に彫刻がされていたり、またそこらを行きかう人々の格好からして一般人と違う!

まさか此処ってドレスコード有りか!?いやしかしそんなことは一言書かれて無いし………


さすがにドアの前で固まっているのは邪魔になるので、ちょっと横にずれて緊急家族会議開催。


「お母さん…此処っていくらするの!!いつも泊ってる所と違いすぎよ、本当に此処に泊るの!?」

「アンナ姉声大きいから押さえて!でも母さん本当に此処に泊るの?世界が違いすぎて怖いんだけど」

「いや私も何がなんだか……」

「あらかじめ調べなかったの?」

「ちゃんとガイドブック見たわよ」

「ちょっと見せて……………母さんこれ、一昨年のなんだけど」


嘘!?ガランに言われて見ると、確かに一昨年の発行だった。

いやでもまさかその間にここまでホテルがランクアップするとは誰が思うのよ!


「ねえ、アーグ兄ちゃん。なんですぐにお部屋行かないの?」

「……分かんない」


アーグ達はよく分かっていないからか退屈そうにしている。駄目だ、このままでは楽しい旅行の貴重な時間がどんどん消費されるばかり。こんな所でごちゃごちゃ言ってても仕方ない!女(?)は度胸!


子供達を引き連れて受付に行く。


「すいません、今日予約していたソウマなんですが」

「ソウマ様でございますね。本日は当ホテルに宿泊してくださり誠にありがとうございます」

「いえいえ…あの~このホテルって改装とかしたんですか?一昨年のガイドブックに乗ってた写真と雰囲気が…」

「はい。去年に大幅な改装をしまして、今年リニューアルオープン致しました」

「あ、そうなんですか~!いや写真よりも凄く綺麗でちょっとびっくりしてしまって」

「ありがとうございます。ソウマ様のお部屋はこちらのお部屋となります」


そういって渡された鍵に書かれている部屋番号を見て……………安心した。

いや、また家の子が何かしてないかとちょっと不安だったのよ。

だけど書かれている番号は825、つまり8階だからそこまで高い階数ではないので恐らく普通の部屋だろう。


チェックインを済ませ、スタッフに案内されエレベーターに乗りようやく部屋に到着。

部屋の中は普段利用しているホテルとは比べ物にならないほど広いけど、スイートとは違うちょっと豪華な普通の部屋だった。


ここにたどり着く前に大分気力が消耗してしまったけど、せっかく来たのにプール行かないなんてありえない。

ぐったりしている子供達に水着に着替えるよう促し、私は持っていく物を準備。

着替え終えた子供達にホテル備え付けの水着の上から着る服(ポンチョみたいなふとももまで隠れる服)を渡し、アリス達にはプールは早いからベビールームに預ける。


そしてホテルから出て再度リムジンに乗りユティハランド最大の名物、リウロへ。

球体であるリウロへ入るには、転移陣(有料)・エスカレーター(乗り継ぎ)・エレベーター・階段(非常用)いづれかの手段により、リウロをぐるっと囲むように建っている二つのリングの一番上、地上20メートルの高さにある受付にまず行く必要がある。


そしてリウロの入場者数は半端無いので受付とゲートが複数ある。

どこから入っても特に問題は無いけど、あまりにも広いため子供以外にも大人も迷子になることが多く、そのため建物やプール内で迷子にならないようにするアイテムがある。


「それじゃあ皆リウロリングはちゃんと付けてる?」


リウロリング………これこそが小さい子を持つ親御さんや団体行動をしている人達大助かりのアイテムである。リウロ、というよりユティハランドに居る時は必ず付けることが義務づけられているため、一人で来ている人でさえ安全のため付けている。


子供達の腕にちゃんと付けられているか確認を終え、今度こそリウロへ!

私達はエレベーターに乗り、ロッカーに荷物を預けて受付へ。

周りには沢山の人達もいるけど今のところ正体はバレていない、ふはははは変化万歳!


問題無く受付も終わり、リウロに続く橋を渡る。

まだか着かないのかって?いやいや前世の某ランドに比べればかなりスムーズだっつーの。


そして目の前にはリウロの水面が広がっている。

ここは球体の側面のため入り方も少々特殊なのだ


「じゃあ好きに遊んできていいけど、12時に此処の受付前に集合だからね」

「は~い!お姉ちゃん早く行こう!!」

「あっ!こら待ちなさい!」


一番乗りとばかりに飛び込むのはキキョウ、そしてアンナがそれに続いて飛び込む。

飛び込む、というよりは体当たりする感じで入って行く二人を見送りながら残り2人はどうするのか聞く。


ガランとアーグはリウロの天辺まで行くとのこと。

あ、タチバナはまだ小さいので私と一緒ね。


ガラン達も見送ってから私達もリウロへと入る。

入った瞬間に全身が包まれるような圧迫感が少しあるが、すぐに気にならなくなる。

向こう側の外の景色が霞んで見えないぐらい大きいので、視界はほぼ青一色。

そして多くの人達が楽しそうに縦横無尽に泳いでいる。


「さて、タチバナ……タチバナ?」


どう遊ぼうか聞こうとタチバナを見ると……そこにはほっぺを膨らましてまるでリスのようにあっているタチバナがいた。

おぉっと、これは説明をしてなかったか。


「タチバナ、リウロは本当のプールではないから息しても大丈夫。ほ~ら呼吸してごらん」


可愛らしいほっぺを軽くつっついて促す。


「ぷひゃぁ!……ほんとだ!なんで?どうして~?」

「はいはい、説明してあげるからちょっと此処から離れようか」


まだ入り口付近にいたため、他の入場者の邪魔になるのである程度離れた位置に移動する。


「まずこのリウロはプールと言っているけど、本当はプールじゃない。そしてこの周りの水も水じゃないんだ」

「?」

「正確にはここはスライムの中なんだよ」

「すらいむ?ママといっしょ?」

「そう、でも私もスライムだけど種類が違うんだよ」


そうこのリウロは魔法で出来たプールなどではなく、正真正銘生きたスライムなのだ。

種族名はエンシェント・シースライム。

シースライムというのは海に住む海水に適応したスライムのことを指すんだけど、この子は通常のシースライムとは違う。

リウロを構成している組織は名前の通り、太古の海そのものと言っていい。


太古の昔……海はこのリウロ同様に陸の者も海の者もみな呼吸が出来る不思議な海だった。


しかしとある降って来た隕石の所為で環境が変化してしまい、前世と同じ陸の者は呼吸出来ない海となってしまった。

そんな環境の変化から免れたシースライムがこのリウロだ。


そして最初は普通のスライムと同じぐらいの大きさだったのが、年月が経つごとに大きくなり、今では世界で一番大きなスライムになったのだ。


え、私?いやいやリウロより長生きしているけど大きくは無いから!まじで太ってないからね!!


「ママ?」

「なんでもないよタチバナ。そうだ!どうせならリウロとお話してみる?」

「おはなし?する~!」

「それじゃぁ、出発~」


目指すはスライムの心臓である核のあるリウロ中心部。

目をキラキラとさせてるタチバナを抱えて泳ぎだす。

変化:自分の想像した姿へと体を変化させる。人化とは違いは自分の好きな姿を取れること。

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