何もない状態から現在に至るまで
「ん~、今日も良い天気」
雲一つない快晴!洗濯物がよく乾きそうだ。
しかし久しぶりに見たな、この世界での最初の記憶の夢。
あれからもう約何十億年も経つのに、意外と覚えているものだね。
普通だったら忘れてしまうのだろうけど、やっぱりこの体になったからかな?
私の体を構成するのは、透き通るような青いゼリー状の体に、紅い宝石のような丸い核、前世ではRPGでは定番の最初の敵キャラであり雑魚扱いされるスライム、それが私の今生の種族名。
まあ、普通のスライムじゃ無いけどね。
えっ説明して欲しい?長くなるから途中省略でなら…
さっきも言った通り、私には前世の記憶がある。
地球という星の日本という国で、親が経営する本屋で働いていた極普通の人間の成人女性だった。
多少…いや…大分腐ったオタクだったよ?でも日本ではよくいる人種だから、普通だ!普通!!
ゲフンっ話を戻すよ。
ある休日、腐女子友達とファミレスで楽しく話していて、ちょうど席を立った時に車が突っ込んできて、グシャッと潰れて死んだのが最後の記憶。友達は会計のため先に立っていたので大丈夫だろう。
気がついたらもう私はこの世界、マビガンヌで初めて自我を持ったスライムとして生まれていた。
生まれたばかりの私は異様に冷静で、自分の体の変化も特に取り乱したりせず受け入れて、気色悪いスライムではないことに安堵した。
スライムになってる事に驚け?だって目玉がぎょろぎょろしたゼリーというより産業廃棄物のようなゲル状だったら嫌じゃないか!!その点ゼリー状の綺麗な青色の体と紅い核なんて可愛いだろ。
…むしろ前世で、最近ネットで流行のスライム転生に私もなってみたいとかアホなこと願ったのが原因か?と思ったりした。
だが死んだのなら仕方がない!この(恐らく)ファンタジーな世界で、スライム生をエンジョイしよう!と決意した。
切り替えが早すぎ?
だって転生したなら、さっさとスライム生を楽しむ方がいいじゃないか!
まあ前世への未練と言えば、私の秘蔵ファイルや薔薇な同人誌の処分かな?
両親に見つからないよう、友人が処分してくれと願うばかりだ(はぁああああっ!!届けっ私の願い!)。
で、状況確認が終わったらまず自分以外の生き物がいないか探した。
視界には乾いた大地以外に動物も植物も存在してなかったから、色んな場所を探した。
ここで新発見!意外とスライムって素早く滑るように移動出来ることが分かった(某はぐれぐらい(笑))。
そして、この星全体を長い時間をかけて調べたら、このマビガンヌには私以外の知的生命体がいなかった。
生物は私と同じスライムが海辺等の水辺にいたけど、ただ本能のままに水に浮かんでたり、ノロノロと(速いの私だけだった)動いたりしているだけだった。意志疎通が出来るか、色々試してみたけど反応は無し。
結論、まだ自我を持つ知的生物が存在しないこの星で、転生の時に神様(もしくはそういった部署の職員)が処理に失敗したのか、前世の記憶と自我を持って生まれた私はイレギュラーな存在なんだと分かった。
スライムは多分、原始生物的存在なのだろう。
見た目も細胞っぽいし。
それからは、まあ色々あったけど長くなるから省くよ。
気が遠くなるほど、長い長い時間をかけて自我や個性を持った生物が生まれ、進化し、ちょっと前世ではあり得ない多種多様な種族と魔法がする世界になっていった。生まれてから約26億年ぐらいだったかな?
剣と魔法の世界と言えば分かるだろう。
文明出来るの早すぎでは?
はははは!ここはRPG的世界だよ?進化が早いに決まってるだろ。思い出しなさい…あのゲーム内でダーウィンもびっくりな超進化するモンスターや種族達を…………(遠い目)
そして今私は、とある国のとある街に家族と住んでいる。
「おはよーお母さぁん」
「おはようアンナ」
起きてきた寝ぼけ眼の娘のおでこにキスを落とした。
ちゅっ
「顔を洗っておいで」
「はーい!」
今の子はアンナ、今家にいる子達の中で最年長の15歳の女の子だ。
普通は長女というのでは?って思うかもしれないけど、私はこれでも長生きしてるから、過去の子達を含めると、数えきれないぐらい沢山子供がいる。なので長女という表現はちょっと違うかな。
今家にいる子達は全員で9人いるけど、昔は同時に100人以上いた時もあったかな?
スライムでも子供を産めるのか?って疑問に思う人もいるだろうけど、私と子供達との間には血縁関係は無い。昔の子達も含めてみんな、親亡くした子や、捨てられた子達だ。少し特殊な事情の子もいたけど、それは横に置いとく。
前世の歴史上あったように、いやそれ以上にこの世界では人間と人間以外の種族間での酷い差別や、同族でも異端に対する迫害や虐待が横行していた時期があった。
今は表向きはないんだが、裏ではまだ根深く存在していたりする。
特に辺境とも呼べる地域ではそういったことが多い。
子供は世界の宝だ。
私は子供が大好きだ。そりゃ子育ては大変だけど、子供を捨てたり害していい理由にはならない。
生まれてきてくれた尊い無垢なる命だ。
少し普通と違うからってなんだ、目の色や髪の色が親に似てないからってなんだ。
覚醒遺伝や突然変異、理由なんていくらでもある。生まれたばかりの赤ちゃんや子供に何か罪があるわけじゃない。
あるとしたら、それは大人の罪で責任だ。
浮気相手との間に産まれた子や愛人の子、跡取り争い等の様々なくだらない大人にとって不都合な理由により、人間に限らずどの種族も罪の無い赤ちゃんや子供を簡単に捨てる。
特に多かったのが、やはり人間だった。
この世界では差はあれど、全ての生き物が魔力を持っている。だが、時に魔力を持たない子が生まれる。
生まれた魔力無しの子は不気味で自分とは違う生き物だとでも思ったのだろうか、生まれたばかりの赤ちゃんをゴミのように森に捨てるのだ。
目の届かない場所で死んでくれとばかりに………
ああっなんで!愛しいと、早く生まれておいでと言ったその口でっ!!簡単に「気味が悪い」「捨てろ」と言えるの!!!
反吐が出る!!!!
あんな奴らは苦しみながら死んでしまえばいい!!
だからこう思った。
いらないと言って捨てたのなら、私が拾って育ててもいいだろう?と…
最初は物好きだ、変なことをする、時間の無駄だと吠える屑共がいたが無視した。
親が死んで行き場の無い子、親に捨てられた子、果ては殺されそうになっていた子等を拾っては育て、教育した。
そして立派に育った子達は、歴史的偉業を成し遂げる子もいたし、そうでなくても優秀な子達ばかりだった。
文化がまだ未発達なこの世界で前世での教育を活かして教育したからかな?
すると、自分達が捨てた癖に親だと名乗る輩が出没した。
白々しくも事情があって離ればなれになっただの、愛しているのだの、挙げ句には私を誘拐犯呼ばわりしてきて、実の親なのだから子供の功績の恩恵を寄越せと言ってきた。
もはや怒りを通り越し、呆れ果てた。
厚顔無恥にも程がある。
もちろん子供達が騙されることも、流されることもなかった。
だって子供達の親や回りがどんな輩だったのか、私のある能力を使って知ってるのだから。
もちろんそんな輩ばかりではないのは知っている。やむにやまれず捨てるしかなかった親もいたので、そういう所には拾った時点で事情を聞きに、親の所に行っている。
ちゃんと子を愛している親だったら、私が育ての親になり、時々は会えるようにセッティングした。
なので後からのうのうと名乗り出て来た輩は、子供達が自らの力で潰したり、立場上手が出せない子の場合は私が変わって排除した。
だって子供の邪魔にしかならなかったんだもん☆
子供達も自分の親は私だけって言ってくれて、もう嬉しすぎて思わず泣いちゃった!
と、しまった話しが長くなったね。
そんなこんなで今でも、子供を拾ったりしてるんだよ。
さて、そろそろ他の子達も起きてくる時間だ。