黄身の瞳に完敗
突然だが目玉焼きをだろうか。そう、言わずと知れた有名な卵料理の一つである。
目玉焼きとは言うが、本当に目玉を焼いてる訳じゃあない。そもそも卵に目は無いのだ。ともすれば、目玉焼きがこちらを見つめるなんてあり得ない話である。至極当然なのだが。
……では、私の前に置かれた皿の上の目玉焼き、その中心に位置する黒と白の球体は何だと言うのか。どう見ても目にしか見えない。
事は数十分程前に遡る。
乗る必要のある電車まで時間の猶予が無かったので朝食を抜いた。駅に降りてからは、用事まで時間が空くので近くの喫茶店で朝食を取ることにした。
私はメニューにあるトーストと目玉焼きという無難な物を選んだはずだった。
しかし、事実は卓上にある。
――残そうか。
いや、店員が見てる。食べろと言わんばかりの強い視線を送ってくる。
緊張で体が少し跳び跳ねた。
そして、私はある事に気付く。
俺を見てる店員の右目にぽっかりと穴が空いているのだ。
更には仕切りに口を動かし、何か言ってる様に思えた。
私は凝視してみる。
『……タベロ……オレノミギメ……クエ』
私は戦慄し、店を飛び出た。
代金だとか些末な事を気にしている場合では無かった。
底知れぬ狂気を感じ逃げ出したはいいものの、外の様子も何かおかしい。
行き交う人々が皆片目を手で覆ってる。
やばい、こっちにやって来た。
「カエセ……オレノメ」「ヨコセ……ワタシノメ」
「や、やめろ! うわあぁぁっ!」
人々が私の目に手を伸ばしてくる。
走っても走っても付いてくる。
もう……だめだ……
***
「先生、彼の容態は?」
「残念ながら失明は免れられないでしょう。それとそのショックで少し気が動転してる様です。場合によっては精神科医による診察が必要かもしれません」
「そうですか」
「まあ、これから目玉焼きを電子レンジで温めるだなんてしない方がいいですね。本人もまさか爆発した目玉焼きで失明するとは思ってもみなかったでしょうから」




