第95話:あの正体は?
第2章最終話です。
「俺は―――ほs」
「あ! ようやく見つけました!」
俺の言葉を遮るかのように控室に入って来る人が一名。
「クロウ君、悪いけど今すぐ理事長室に来てくれないかしら」
場の空気を読まない登場をしたのは、アルゼリカ先生だった。
「え? あっ、はい分かりました」
「あっ、従者さんは付いてきてもいいけど、部屋の外で待たせておいて下さい」
そう言い残すとアルゼリカ先生はすぐに控室を後にしていった。
「……行くか……」
「ちょっ、今なんて言おうとしたの!?」
「サテ ナン ノ コト デ ショウカー?」
何をいいかけようとしたのか問いただそうとするエリラ。
「えー、今答えようとしt―――」
「いつかその時が来たら言うから、その時まで……な」
俺はすべて言いかける前にエリラの頭にそっと手を置き、頭をナデナデしてた。急にこんなことをされるとは思わなかったのか一瞬驚いていた。
「……ム゛ー……」
膨れっ面をしながらも、顔を赤くし、どことなく嬉しそうな表情をするエリラ。
「……絶対だよ」
「ああ、約束する」
「わかった。じゃあ早く行きましょう」
俺はアルゼリカ先生に言われた通り理事長室に来ていた。エリラはと言うと恐らくドアの反対側で立って待っていると思う。と言うのも、外で素振りとかしていそうなので予想に留まっている。
理事長室の中にはアルゼリカ先生が既に待っており、アルゼリカ先生は俺を部屋の隅に設置されてある来賓用のソファーに座らせ、早速本題に入った。
「単刀直入に聞くわ。あの怪物はウグラ君なの?」
「……何故そう思うのですか?」
「今回の行方不明者はウグラただ一人。死んだ人たちの死体はすべて回収され確認もされた。そしてあの怪物が闘技場に現れたのはウグラたちがいた控室の方」
「……」
「外にいた警備員に聞いたのだけど、彼らはそんな化け物など見ていないし、怪しい人物も通っていないと言っていたわ。そうなってくると、たった一人だけ姿を消したウグラ君が怪しくならないかしら? もしくはあの怪物がウグラ君自身で無かったとしても、なんらかの介入をしたと考えられないかしら?」
どうするべきか……ここで言ってもいいのだが……。
俺が最も危惧するのは、言ってしまうことで本当に関係ない人たちが巻き込まれる可能性があるということだ。一家下手したら親族すべてを処罰とか洒落にならない。しかも、あの闘技場には国の関係者もたくさんいたはずだ。そうなるとその危険がなお高くなる可能性がある。
「……さぁ、私はその辺はわからないn
「嘘を付かない。あなたほどの実力の持ち主が何も感じなかったはずがないわ」
険しい眼つきでピシャリと言い放たれた。言葉からは絶対そうだと思わせる雰囲気が流れ出ていた。どうやら彼女は俺が何か知っていると決めつけているようだ。
これは……たぶん折れないな……
「……はぁ、そうですよ、少なくとも私がみた限りですが」
結局、俺の方が折れる形となってしまった。恐らく折れなかったらずっと問いただされる事になっていただろう。
「そう、あなたが何で最初に言おうとしなかったかは、あえて聞かないでおくけどそう言った事はしっかり大人に言ってください」
俺の方が年上ですけどねー(前世と合わせると40歳)
「それで……あれは結局どういう状態だったのでしょうか?」
「それは本当に分かりません。ただステータス異常で《狂人》となってはいました」
「《狂人》?」
「はい、それ以外は……あっ あと、名前の部分に?マークが付いていましたね」
「?マーク? 一体どういうことかしら……」
そんなの俺が聞きたいよ。《神眼の分析》すらも不明表記されているんだから……。
「分かりました。今日はもう帰ってよろしいです。私たちは今後、あの怪物の正体をもっと詳しく調べていくけど、あなたたちは手を出さないようにして下さい」
「えっ、私も何かあったら力に―――」
「手を出さないでください!!!」
机をドンッと叩きながら大声をだし、手を出すなと言う彼女。思わずビクッとなってしまった。
「……ご、ごめんなさい」
「い、いえ……気にせず……」
「兎に角、これ以上あなたたちは介入をしないようにして下さい」
「……分かりました」
もともとこれ以上介入する予定は無かったし、多少後味が悪いがここらで手を引くべきだろう。
結局、これ以上何の進展も無かった。
ウグラのあの暴走。アレは結局なんだったのだろうか?
この事件に手を出すつもりは無いが、もう少しその辺は調べておくべきかもしれない。セラに聞くことも出来るかも知れないが彼女も知らないこともたくさんあるだろう。彼女も「神も万能ではない」と言っていたからな。
結局その後は外で素振りをしていたエリラと共に家に帰ったのだった。
==========
コンコンとドアが叩く音がした。
「どうぞ」
「失礼する……どうでしたか?」
「……あれはウグラ君で間違いないと思います」
「ふむ、あの怪物を討伐したのがあの《炎狼》を討伐した冒険者か。あのような人材を吾輩も部下に持ちたいの」
「はは……で、今後はどうなるのでしょうか?」
「おそらくウグラが住んでいた自宅は差し押さえられ、そこにいた人たちは拘束されるだろう。処罰についてはまだ分からんがの。ああ、あの焼死体は国で調べさせてもらうよ」
「ええ、問題ありません」
「今年は残念だったが来年の魔闘大会は楽しみにしているよ」
「ええ、来年はこんなことが無いといいのですがね」
「どうかね……私は思うに、これからもっと荒れると思うぞ」
「? どういうことですか?」
「だいぶ前にエルシオン近辺を警備していた兵団が全滅したのは覚えているかい?」
「? ええ、で、それがどうしたのですか?」
「調査の結果、犯行はエルシオンより南部に位置するクローキ火山地帯一帯を制圧している龍族と断定されたのだ」
「龍族が?」
「ああ、これに対し国は討伐隊を結成したそうだ」
―――――戦争が始まるぞ
静かな校舎に冷たい声が響いた。
と言うことで、今回をもちまして第2章「魔法学園:魔闘大会編」は終了です。
最初はカッコよくクロウたちが優秀者になることも考えていたのですが、色々考えた結果このような話になりました。
と言うのも、もうすぐで100話に到達しそうなのに『いつまでタイトル詐欺をしているんだよ!』と言われそう(と言うか、前に言われました)なので、第3章はいよいよ『戦記』と言う所に入っていきたいと思っております。
構想はもう少し考えてから投稿しようと考えておりますので、次回投稿は2/15を予定しております。最近遅れ気味なので、ペースを上げないとと思っているのですが、変わらない自分。泣けますね(泣)
話を変えまして、もうすぐバレンタインですね。読者の皆様は誰から貰ったり差し上げたりするのでしょうか? 私の友達は嘆いていました。「どうせ俺らには関係ないな」と。
私ですか? 聞かないでください(土下座)
という訳で、色々良くありませんが、2章はこれにて終了です。感想などいつでもお待ちしております。
いつも書いてくださる皆様。本当にありがとうございます。
では、また次回、黒羽からでした




