第88話:レミリオン v.s. ウグラ
ようやく、2日に1回の更新に戻れました。
では、第88話をどうぞ。
「このっ、バカぁ! 手を抜くんじゃなかったの!?」
「えっ、一応抜いたけど?」
「アレのどこが!?」
競技場に向かう為の通路で俺に待ち構えていたのはエリラの説教だった。
「万が一観客が怪我でもしたらどうするつもりだったの!?」
「いや、その万が一を考慮してアレですけど?」
本当ならもう少し数も威力も増やす所だけどな。流石にやり過ぎると魔力がやばいけど、あれくらいならまだ撃てる自信はある。
ただあれ以上やるとマジで称号辺りに《歩く天災》とか《全てを消す者》とかが付きかねないから自重するけど。
「……アレ? 私、疲れているのかしら? アレデモ テ ヲ ヌイテイル?」
「イエス」
「……」
俺の言葉を聞いて硬直するエリラ。目の前で手を振ってみたりお馴染の行動を一通りやってみたが、やはり動かなかった。
アレ? これリアルに大丈夫? 俺がそう思いだしたころにエリラの表情がハッとした表情に変わった。どうやら戻ってこれたようだ。
「大丈夫か?」
「あー……もう……どうでも良くなってきたわ……もう、クロだからしょうがないとしか思えない……」
どうやら想像以上にショッキングな出来事だったようです。
「……所で判定をされる前にここに来たけど大丈夫なの?」
「大丈夫だろ。てか、負けならそれはそれでいいし」
ぶっちゃけあんなことをやれば早々手を出して来るような馬鹿はいないと思う。いや、馬鹿が居ないことを信じよう。
リネアの方にもいい意味で影響が行ったらいいな。
「そろそろ次の試合だな」
俺は闘技場に設けられた選手専用の客席に座って次の試合を見ることにした。
ちなみに、ここに来た時には道を開けられましたよ。ああ、想像上の効果だったようだ。それと同時に何やら少し豪華な服を着ている国の関係者らしき人たちが少し選手用の客席の周りに集まってきているようにも感じられた。
てか、こういうVIPな人たちって普通専用席みたいなのがあるよな!? なんで一般生徒たちに紛れて観戦しているの?
もしかして、本来こういう大会って国の人たちは来ないのかな?
俺がイメージしているのは闘技場の観客席で一番高いところに王の間みたいに赤くて、豪華な作りをした椅子や装飾品があるところで堂々と座って観戦して、部下たちはすぐ下の席で見てる? そんな感じのを想像していたのだが、どうやら少し違うようである。
と言うか、このままここにいたら確実に話しかけられそうだなおい。
あれほどのことをやっちゃったのだから、何か言ってくるのが当然と言えよう。
自分の駒になればとか思っているんだろうな。
このままでは嫌な予感がするので、この試合を見終わったら全速力で選手控室の方に逃げようと思う。エリラも周囲の視線を嫌がっているのか、キョロキョロと辺りを見渡して、俺の左腕を少し強めに握っている。
まぁ、それ以外にもエリラは元貴族だから顔見知りが居たら不味いんだけどな。アレ? そういう意味でもすぐ移動した方が良くないか?
と、そうこうしていると次の選手らが出てきた。
ここまで来るとなんか逆に動かない方がいいかなと思い、この試合はココで見ることに決めた。
ちなみに、俺は勝っていることになっていた。なんでもリーファの方から「僕の負けです」と自らギブアップをしたとのこと。
リーファ……あんたはいい奴だったよ、うん(※死んでいません)
さて、次の対戦カードはレミリオンとウグラか……ちなみに、勝った方と次に俺はぶつかることになる。
どっちも対戦したくない人物だ。正直共倒れにならないかなと思っていたり。
予選の魔力数値はほぼ互角。若干レミリオンの方が上と言ったところだったけ? まあ《神眼の分析》を使えば分かる話なのですが。
さて、どっちが勝つかな?
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「両者用意はいいか?」
「来なさい。あんたを潰してあのクロウとか言う奴の化けの皮を剥がしてやるんだから」
「……」
っち、何も言わないのですか。いいですわ。すぐに終わらせて差し上げましょう。
このウグラとか言う人は冒険者とか言っていましたが、そんなの関係ありません。全力で叩き潰して上げましょう。
「始め!」
審判の始めの合図と共に私は、前に足を踏み出した。
何故私がこう出たかと言うと今までの試合は殆どの初手が魔法だったからよ。魔法を使うには詠唱時間がかかる。私の経験ではどんなに早くてもそれなりに威力を出すのなら3~5節は必要。
あいつとの距離は僅かに10メートルちょっと。3節もあれば、十分に懐に入れるわ。
案の定、ウグラは詠唱の構えをしていた。
ばかね。冒険者とか所詮口ばかりよ。実際の戦闘では距離を置くまでは近接攻撃が当然じゃない。
私は、腕にグッと力を入れ木剣の刃の面をお腹辺りにめがけて一気に振りぬこうとした。
だけど、次の瞬間。彼の口から衝撃の言葉が飛んできた。
「《炎柱》」
その言葉と共に、突然私の足元に魔方陣が生まれ、そこから一気に炎が噴き出した。
私は回避することがあ出来ずに、突然現れた炎に掬い上げられた。
何故!? 確かに彼は詠唱の構えをしていた。そして事実魔法を放ってきた。だけど早すぎる! 何節とかの問題じゃないわよ! 下手をしたら無詠唱くらの早さはあった。
いや、考えている暇はないわ。上空に掬い上げられたら回避が不可能になる。ここは、魔法を撃って来たところにカウンターを―――
「どこ見ているんだ?」
突如、自分の背中側から声がし、振り向いてみるとそこにはウグラがいました。
えっ、何故彼が私よりも高い位置に―――
そう思ったときには彼の踵落としが私の腰に決まっていた。そして、私はそのままお腹から地面に叩き落とされた。
腰に受けた蹴りと地面に落ちた時の衝撃が私を襲った。呼吸をしたくても出来ず、私はその場で蹲っていた。
「おいおい、もう終わりか? 試金石すらにもならねぇな」
痛む体を声が聞こえた方へと無理やり動かす。
ウグラのニヤニヤした顔が見えた。普通の時に見たのなら、どこか間抜けな顔だなと思っていたかもしれない。
だが、彼のにやけ顔は、今の私には『悪魔』にしか見えない。
「もっと、実験させてくれよ」
次の瞬間。ウグラの蹴りが私の横腹を捉えていた。
そして今まで感じたこともない衝撃と共に、私は空中へと投げ出されていた。
審判が判定していないけど大丈夫? と言うご意見が寄せられましたが、こういう結末になりました。いかがでしたでしょうか?
もし、私がクロウの対戦相手ならこうしていましたね。もう泣きながら土下座でもしていることでしょう。
他の人も内心、イチャモンをつけたかった人もいるでしょうが、私からしてみればそんなことをして、後でバレたら「ちょっと、体育館裏まで来ようか」みたいな流れが起きそうで怖くてとてもじゃないが言えませんね。(ガクガクブルブル
いつも、感想ありがとうございます。特に毎回書いてくださる人には、もう足を向けて寝れません。ただ、どっちの方にいるのかは分かりませんが。
次回も頑張って書きます。では、また次回




